京極迪宏(再生研究会理事・交流会担当) 全国町家再生交流会を再び京都で 私たち「京町家ネット」では、『京町家通信』発行月(2ヶ月に一度)に、4会の代表と事務局担当の幹事が集まりネット会議を行っている。この会議では全体の活動が円滑に行われるよう各会の活動報告、調整、協働等について協議しており、昨年11月の会議で、全国町家再生交流会を2007年、再び京都で開催することを決めた。 早速、4会から17名が選ばれて第2回全国町家再生交流会実行委員会が組織され、12月、1月と2回の会合を行ない、前回の総括、問題点の整理等を踏まえて、開催内容の検討に入っている。まず、第2回の主テーマについて十分な意見交換を重ねて絞り込み、総務・財務、研究、会場設営、広報に担当委員を配置して内容を具体的に詰めていく。概要については、全体像がもう少し鮮明になった段階で改めて紹介するが、日程は12月1日(土)・2日(日)。 記念すべき全国町再生交流会(第1回)は2005年6月11・12日、京都芸術センターを主会場に開催され、全国から82団体、351名が参加した。「町家再生」をテーマに、市民活動団体が仲間に呼びかけた全国規模の初めての集まりであり、試行錯誤状態での開催であったため、準備不足、運営の不備等反省点も多い。しかし、大変好意的に評価いただいたことが、「報告書」の参加者アンケートからも伺え、疲れが心地よく感じる。開催にご尽力いただいた関係者、スタッフに改めて謝意を表したい。 前回の交流会の目的は以下の4点に集約される。
これらの目的が達成されたか否かは、交流会以後における京町家ネットの活動の活発化、深化によって判断されるところである。【1】【4】については概ね当初の目的を果たしたと言えるが、【2】【3】はその端緒に就いたに過ぎず、今回の第2回交流会において更なる意見交換を重ね、実践のための研究を一層深めていくことが重要である。 交流会への参加呼びかけから早くも2年近くが経過した。そのとき、案内状で触れた「京町家ブーム」は一層加熱し、商業空間としてのみ利用する転用は止まるところを知らず、見てくれだけの町家店舗が乱立している。我々が目指す職住一致の住まい、あるいは人に優しい都市住宅としての町家の保全・再生の動きは世相に押され、相変わらず低迷している。一方、地方においては「中心市街地における空家の活用」問題が深刻度を増しており、活用されたとしても商業空間に偏っている。昨年秋に福岡県八女市で開催された「第29回全国町並みゼミ」でも、分科会の中心テーマとして「空家対策」が大きく取り上げられた。第2回全国町家再生交流会に取り組むことを決めたのも、この二極化の様相が一層顕著になっているからである。 前回でもその違いが鮮明であったが、町家再生を巡る社会状況は京都と地方では全く異なる。地方で最大の問題となっている「町家の空家」は京都には殆どない。と言っても、実際には居住者のいない町家が地方に比べて少ないという訳ではない。正に「ブーム」がもたらした俄か資産価値上昇(期待感)によって持主に隠匿され、「空家」として顕在化しないからである。また、たとえ販売・賃貸物件として町家が不動産市場に現れても、「ブーム」は持主・家主に欲の皮を突っ張らせ、流通を疎外する。 この2年間に我々の活動を取り巻く状況は大きく変化している。景観法施行に伴う条例等の整備によって地方自治体による新しい景観施策が始まり、町家ファンドによる助成も動き出した。我々も研究に参加した京町家不動産証券化の第1号プロジェクトも成立した。しかし、これらの新しい動きは、我々が取り組んできた京町家の保全・再生にとって、果たして「追風」になっているのだろうか。じっくり検証してみたい。長年に亘り培ってきた地域の歴史や文化、暮らしを継承することなく、安易なファサードだけの町家改修、修景がもたらすものは空虚さだけである。 厳しい『継承』をキーワードに、町家の保全・再生の意味を再び問い直し、真の活性化を全国の仲間と協議する場が、初冬の京都で再び実現する。ネット会員の皆さんには、第2回交流会への忌憚ないご意見をお寄せいただきたい。 2007.3.1 |
||||||||