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京町家再生研究会
大谷孝彦(京町家再生研究会理事長)

京町家再生研究会活動の活性化
  この5月9日に京町家再生研究会(以下再生研)の総会が行われ、京町家ネット4会の総会が全て無事終了し、各会ともに新たな年度の活動をスタートしました。改めて申すまでもなく、ネットの活動は概ね、作事組による伝統技術、情報センターによる町家流通、友の会による町家の普及と全般的な活動支援という分担で、かつ有機的な連携をもって取り組んでいます。
 実践的な活動部門として再生研から独立したネットの各会が目に見えやすい具体的な活動を進める中で、母体である京町家再生研究会の基本的な役割は町家再生に係わる調査・研究という地道な部分を受け持つこととなります。このような地味とも言える取り組みの場合、ともすれば活動が停滞しがちです。市民活動は多くの人の積極的な参加を得て活発な活動展開ができます。活動の活性化には人の集まる力が必要です。更に実力あるNPOとしての再生研の今後の活動活性化を確認してみたいと思います。
 一つには、当たり前のことの再確認ですが、地道な研究活動の成果を着実に上げることが必要です。まず会員皆様にも関心を持って頂ける「研究課題の設定」です。ネットのような市民活動の特性はボトムアップ的に個々の事例に実践的に取り組むことです。ネットが積み重ねてきた貴重な実績の中には、共通的問題と共に、その都度に異なる個別の問題があり、これらをきめ細かく拾い上げ、改めて総括的に捉えて見直すことが大切です。そこには町家再生に係わる、基本的で、かつ重要な課題があります。今、具体的に挙がっている中では「再生の資金」、「既存不適格などの法制度への対応」などが特に差し迫った重要課題です。継続で実行している「楽町楽家」や「設計施工交流会」の経過を振り返ってみるのも意義あることかと思われます。
 次に課題に対してそれぞれの立場から積極的な意見、提案を頂き、議論を積み重ねる場を設けること。それには例会や分科会などの継続的な場が必要であり、シンポジウムなどの随時的企画があっても良いと思われます。そして、議論をしっかりと記録し、最終的には結論、成果を報告書、提案書などの具体的に目に見える形にまとめ、市民や地域、他の活動グループに発信し、行政に提言するという働きかけが重要です。これにより、研究成果が本当に実のある町家再生の広がり、町家を根拠としたまちづくりに役立つものと思われます。これを着実に実行できるよう、担当幹事と参加者がしっかりとしたチームを作り、共同の作業として、責任を持って取り組める体制づくりが必要です。
 また、町家再生の取り組みには人手、時間、資金が必要であり、このことはどこの活動組織においても乗り越えねばならない共通の問題です。作業部分については、学生さんの参加を得ることも効果的です。また、活動の資金対策として、研究助成を得ることなども必要です。
 二つには、それなりの資金が必要となるのですが、実際の町家を購入、または借用して活動の核とすることも効果的かと思われます。まず、その町家の補修・改修に始まる再生の実践、その後様々な運用企画を実践的研究として常に目に見える形で継続実行します。地域の拠点となって、地域との連携も可能であり、また、子供達を対象とした企画は町家の後継者を育て、学生の参加を得るチャンスともなります。わずかであっても運用益による収入も会の活力になります。
 三つには、活動の連携、ネットワークの強力化です。それぞれの活動主旨や手法を持つ組織が連携をとることによって、幅広い情報が得られ、また、他に訴える声を大きくし、活動のエネルギーを増幅することができます。最近の我々の活動も、全国町家再生交流会、全国作事組協議会など、活動の全国的展開が進みつつあります。海外においても、昨年はニューヨークのWorld Monument Fundという大きな組織を訪問し、交流を深めた結果、今後、京都における具体的物件への支援実現に繋がる可能性があります。それぞれの活動の立場や手法の違いから、困難な面もありますが、町家再生活動を先駆的に進めてきたと自負する再生研としては、特に地元のネットワークの要としての役割を果たすことが大切な責務と思われます。
 京町家再生研究会の地道な活動の展開を目指して、会員の皆様のご協力をお願いいたします。

2009.7.1