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京町家再生研究会
小島富佐江(再生研事務局長)

ティファニー財団伝統文化大賞 受賞のご報告
 去る2010年6月29日 東京で行われた授賞式に大谷理事長、木下理事、小島の3名が参列しティファニー財団プレジデントフェルナンダ・ケロッグ氏より伝統文化大賞をいただきました。
 全国から大賞には30件、奨励賞には54件の応募がありました。大賞は10年以上の活動を継続させている団体に対して贈られる賞で、当研究会の18年にわたる活動を認めていただきました。選考委員の皆様から大きな評価を頂きました。今後の活動の励みのために、各委員の評をここに掲載させていただきます(財団法人日本国際交流センターのホームページより転載 http://www.jcie.or.jp/)。伝統文化振興賞は赤煉瓦倶楽部舞鶴が受賞されました。

◎ 南條史生(森美術館館長[選考委員長])
 長い歴史のある京都には多様な文化遺産が残っており、世界的に見ても魅力的な観光資源であるが、それが近代化の過程と経済不況の中で、急速に失われていることを憂う人は少なくない。その中で京町家再生研究会は、京都の町家の修復・保全を、永続的な活動として実施しており、その意義は大きい。また町家を単に建築というハードとしてとらえるのでなく、通常の生活の中で、町家における暮らしを維持しつつ、高い見地に立ってこの活動を広げている。その結果は町の文化価値、生活基盤としての価値、不動産価値を高めることにつながっている。将来に向かって古都京都の価値を確保していくことは観光立国を目指す日本の国にとってもっとも重要な方向だといえるだろう。また、このような取り組みは、日本各地の街並保存運動のために、きわめて参考となる方法論であり、その意味で、広く知られるべきだと考える。今後、修復・保全に加えて、未来の「人の生き方」につながる新しい町家の使い方、都市作りへの提言を理念化していけば、より意義深い活動になるだろう。

◎田中優子(法政大学教授)
 「京町家再生研究会」の活動は、まことに京都らしく、民間が結束してすすめてきた。京都は伝統的建造物が多く、消滅に危機感があったろうが、その危機感を単に抱えているだけでなく、人々が集まり、相続税という現実的な問題への対応や、維持するための貸与の相談も受けながら活動してきたという。生活する人々に密着した極めて自然で現実的な方法が見事だ。町家悉皆調査をデータベース化しており、研究業績としても注目すべきものがある。伝統工法での再生は資金が必要だが、通常の住宅用融資を受けることができない。そこで町家証券化を試みたり、信託に挑戦する予定を立てたり、従来にない方法の開拓が面白い。他の再生活動の手本になるであろう。町家は、季節感や空間時間にめりはりのある生活感覚を養うという意味で、子供や若者に最適な建築物であり、精神的なものの継承においても、極めて大きな意味をもつ活動である。

◎日比野克彦(アーティスト、東京藝術大学教授)
 今回の受賞は共に建築物の再生である。建物は人が空間を利用する時に、機能を特化させるためにつくる。建物を何も作らなくても人は生きていける。人が空間に求めるものも建築物がなくても、なんだかんだある程度は獲得できるであろう。今回の二つを例にとってみるならば、人間がそれなりに快適に生活する為に京都の町家は建てられた。長細い地形や、中庭などの特徴は、時間の中で生活することによって変化させてきたのだが、その変化のベクトルを使用者の精神も含めて反作用していけば、そこが更地であっても人は生活していける。舞鶴は物を保管する為に、赤レンガという材料で、囲われた大きな空間が建てられた。しかしこれも同じ理屈で、逆方向にベクトルが動けば、そこが更地でも物は置ける。建物が建てられた当時のように使用されなくなってきたから、建物がなくなるというのは当たり前である。そんな機能しなくなったものは更地の状態と同じであるかそれ以下である。ある機能を特化させるために建てたのだから、その機能が失せれば建物は消えていくのが常である。機能しない建物をいつまでも建てていたら、誰もそこにはこなくなる。そして廃墟となりゴーストタウンになっていく……これは悪いことではない、人は移ろいでいくものであるから、それでよい。世界中の建物のほとんどは建てられてはそして、時間が経つと壊されていく。  しかし町家と赤レンガは時間の常識にはむかっていこうとしている。これには自然の摂理に逆流するとてつもない「力」が必要である。その力がこの二つにはある。町家と赤レンガは1000年たってもそこにある!!そのつもりでやりましょう!

2010.9.1