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京町家再生研究会
小島冨佐江(再生研理事長)

京町家の初夢

 新年明けましておめでとうございます。本年も研究会の活動にご協力の程、よろしくお願い致します。

 昨年は2月に第3回「地域再生大賞」準大賞をいただき、また9月には京都創造者賞〈もてなし・環境部門〉2013をいただくという、恵まれた年でもありましたが、2月には当研究会の設立者である望月秀祐氏がお亡くなりになられ、20年という時間の経過を実感した年でもありました。

 設立当初から望月会長のお考えの下、様々な取組みをしてまいりましたが、それがじわじわと今日の町家を取り巻く状況に改善をもたらしていると感じております。防火のため町家に手動のスプリンクラーを設置することをはじめとして、町家の安全性向上については多くのことが試みられました。また、バブル期とよばれた異常な経済状況からの相続税への取組みが景観法による税金の減免へと繋がっていったこともこれまでの活動の成果としてあげることができるでしょう。

 設立当初から町家にかかわる問題の解決に向けた研究、実践を続けてまいりましたが、今ではそれらのことが当たり前のように話され、町家再生を取り巻く環境は日に日に変化を遂げています。今日、最初に述べたような賞を頂くことができたのも、望月会長をはじめとする多くの先達のご指導があったからと感謝しております。多くの先達が鬼籍に入られましたが、その思いは今も続いています。私たちはそのことをしっかりと受け止め、これからの活動を続けていく責任があると思っています。

 以下は一昨年のニュースレターに書いた「初夢」です。

 「町中は大きく変容しています。町中の町並みはその地域の協議によって決定され、新しく建つ建物は地域の中でデザインが決められるようになりました。地域で守り続けたい建物のリストアップもどんどんと進み、京町家ネットもその調査や修理について、相談を受け、地域ごとの町家の保全再生の一端を担っています。町家は地域ぐるみで支えられるようになってきました。京町家再生研究会も世界的に協力者を募り、ファンドを立ち上げました。緊急性のある町家を一時的に買取り、改修し、大切に住み、活用してくださる方々へと引継ぎをするためのものです。多くのスタッフが忙しく働いています。」

 このときにもファンドを意識した「初夢」を書いていますが、今年は早々に「寄附」を募るという課題があります。前回のニュースレターでもご報告、お願いをしておりますが、私たちが20年間活動してきたことに対して多くの方々の賛同を得るということがどこまでできるのか、新しい試みです。これまで数年間に亘り、私たちはワールドモニュメント財団から多大な支援を得て、それが釜座町町家の再生につながり、木田安彦氏の町家美術館という新しい町家の展開が生まれました。さらに、東京でのシンポジウム、相談会など京都だけにとどまらず全国へと町家再生への理解者、協力者を募ろうとしております。一昨年の初夢が現実となるかどうか、これからの私たちの活動にかかっております。

 かつて京都のまちなかは地域の方々の寄附を受けて小学校が建ち、再生研本部のある明倫学区でも室町通錦上るに立派な小学校があります。現在は京都芸術センターとして多彩な芸術活動の拠点と成っていますが、学区の方々の愛着はとても深いと感じます。これは学区の先代たちが寄附をされて建てられたということを皆が聞いているからです。寄附をしてそれで終わりというのではなく、長きに亘りずっとそのことに関心を持ち続けてもらうということが寄附ということの理想の形だと思います。町家に対しても多くの思いが形となってあらわれ、末永く愛着を持っていただけるような取組みを目指して、今年最初の取組みを進めたいと思っております。

 さて、今年の「初夢」です。

 「いよいよ京都の大学では伝統的な木造の設計が課題となるそうで、建築を学ぶ学生さんたちがいろんなところで実測や設計の演習をするらしい。また、小学校や中学、高校でも住まい方や町家の暮らしを授業の中に取り入れることが決ったようです。様々な体験のできる町家をいくつか検討しているようで、京町家再生研もどのような協力ができるか考えているところです。子供たちが暮らしの体験をできる町家がもうじきまちなかにできるようで、皆が心待ちにしているところです。」といった夢が正夢にかわるよう、もうひと頑張りしたいと思っています。

2014.1.1