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京町家再生研究会
丹羽 結花(京町家再生研究会事務局)

東京相談会「京町家に暮らす」開催に向けて

 2013年2月「住みたい知りたい京町家」と題して、初めて東京で不動産相談会を開催しました。東京から京町家を探しに来られる方が増えてきたので、情報センターが中心となり、物件を東京で紹介しようということになったのです。不動産情報を東京で提供するだけではなく、京町家の再生にはどのような意味があるのか、きちんとした改修とはどういうものなのか、セミナーを開催し、きちんとした構造改修の事例をみなさんにしっかり伝えようと企画しました。再生研はもとより、作事組の大工さんも総出で東京へ赴きました。
 このとき来られたのが横浜在住の友田健一さんです。伝統構法による改修にとても興味を持たれ、その後、京都にある実家を再生することになりました。今では、折々にご夫婦で来られて長期滞在し、町家の暮らしを満喫されています。友の会の行事にもほぼかかさず参加、場合によってはお手伝いにも来られます。いきさつを友田さんに伺いました。

東京相談会に参加したきっかけ
 京都在住の息子が実家の補修を検討する為にいろんな所を回っていました。その一つである京都市景観・まちづくりセンターから、冬に東京でセミナーがあることを教えていただいたのです。主催団体の京町家再生研究会や作事組のことは全く初耳でした。非常に関心のある町家の補修についてわざわざ東京まで出張して説明されるというので、これを逃すことはできないと参加を決めました。

改修の方法を詳しく聞く
 東京会場のセミナーで詳しく改修の方法を講演された時に、再生研、作事組のみなさんの並々ならぬ町家再生への情熱を感じました。セミナー後の相談会で詳細を問い合わせた時の対応者が、講演をされた木下龍一さんと大工の大下尚平さんでした。いろいろと伺ううちに直感で「この方たちなら信頼して仕事をお任せできる」と思いました。後日、木下さんを頼って京都に戻って詳しく打合せを始めました。京都の現地をつぶさに調査していただき仕事を依頼することにしました。もっとも他の業者さんを探そうにもその方法が分からなかった、というのが正直なところです。

本格的な改修へ、気持ちを切り替える
 はじめは予算的にもゆとりがないので、傷んでいる所を限定的に補修していただくつもりでした。何回か話を詰めていくうちに大屋根の棟木に記された建築時の銘からこの町家が104年も経っていることが判明、「本格的に直せばあと100年はもつ」と木下さんたちに改修を勧められました。「ひ孫の代までこの家を残そう」と気持ちを切り替え、持っている原資に町家ファンドの補助を加えることで何とか資金の面は解決できるだろう、と清水の舞台から飛び降り(?)ました。

町家の暮らしを楽しむ
 一年の半分弱は京都暮らしです。通り庭の高い土壁と柱、お座敷の聚楽壁など蘇った数々の美しく味わい深いものの下での生活を楽しんでいます。京都育ちの私にとっては50年ぶりの里帰りで学生時代の仲間との交流が増えて心身のリフレッシュに役立っています。九州出身の妻は多くの親戚・友人たちに町家住まいを味わっていただき喜ばれています。町家の底冷えは相変わらずですが、通り庭の台所の床を上げたことで厳しさは非常に和らいでいます。
 横浜との往復ですが、決して大変とは思っていません。年に数回旅行に出かけるのと同じ感覚です。横浜が本宅、京都が別荘の感覚で往き来しています。

 2014年9月27日に開催された2回目の東京相談会では、松井薫・情報センター代表による講演「京町家の魅力と活用法」とともに、友田さんが講演者として登板、改修に関するお話をしていただきました。2015年11月21日には小島富佐江・再生研理事長が京町家の魅力と暮らしを伝える講演をおこなっています。講演の後、作事組の設計士や大工と一緒に情報センター登録業者が相談をうける仕組みは変わっていません。京町家を伝統構法で健全になおし、美しく暮らすことを事例に基づいて丁寧に説明するようにこころがけています。昨年は不動産投資の立場から参加された方があまりにも多かったので、今回は住みたい方々に焦点を絞りました。
 最後に、京都に戻ろうかな、京都に住みたいな、京町家に住めるかな、と思っているみなさんに友田さんからのメッセージです。

「思い立ったが吉日」、まず専門家(たとえば作事組)に相談することです。そこからスタートです。

2016.11.1