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京町家再生研究会
林 邦彦(四条町大船鉾保存会 代表理事)

四条町大船鉾会所完成

 1877年(明治10年)四条町は下京第9番小学校を建設、運営にあたりました。手ぜまになり白楽天町(室町通綾小路下る)に移転するまで6年間でしたが、莫大な借金が残り、結果、借金返済のため、町家も同時期に売却されました。明治維新という近代の黎明期に青少年の育成に力を注いだ先人達の心意気は、四条町町衆のほこりとするところでありました。
 多くの方のご支援により2014年に大船鉾が150年ぶりに祇園祭後祭巡行に復興いたしましたが、鉾の部材等の収蔵場所がなく円山公園山鉾館の収蔵庫やヨドバシカメラ(文化遺産展示室)等で収蔵しておりました。毎年の鉾建て時に町内への移動と動力とコストもかかり、保存会一同も町家(会所)の必要性を感じました。
 そんな折、保存会(相談役)の長老でもある田中久男(持ち主)氏から土地、建物を手放されることをお聞きしました。建物は四条町のほぼ真ん中に位置し、2階が新町通りに面しており、鉾建ての位置としても絶好の場所と建物でしたので、このチャンスを逃しては今後会所の購入は出来ないと、会所(町家)購入を保存会理事会で決断いたしました。
 田中氏の四条町に役立てたいと言うご希望と、保存会の会所があればと言う要望にも合致し、土地購入にあたっては、田中氏はもとより保存会役員、町内会の方々と京都信用金庫のご協力により、2015年6月に公益財団法人四条町大船鉾保存会の会所(町家)として購入することが出来ました。家(建物)は昭和12年に建てられたものです。(土地面積205.85u(62.27坪)延床面積148.42u(44.90坪))
 この会所が出来ることにより、2階より鉾への上り下りが出来、兼ねてより下京署より宵山期間中の鉾の脇道の狭さや、人の雑踏による危険を指摘されてきたことが解決できます。また、鉾の部材を会所の奥に収納できることにより、鉾建て時の効率化が図られます。
 お囃子のお稽古の場や、町内、保存会の会合の場として使用が出来ます。ただ屋根の葺き替えや、元の建物に復元する改修が必要です。
 さて、資金面では保存会には資金が少ないため京町家再生研に相談し、ワールドモニュメントファンド財団を紹介いただき、フリーマン財団に三件目の京町家再生プロジェクトとして申し込み、町家の保護と会所の必要性について説明し承認いただきました。
 この改修工事にはワールドモニュメントファンド財団のご支援を初め、京都市より景観重要建造物として指定対象に選んでいただき、多大なご支援をいただくことになりました。また、京都市空き家活用・流通支援等補助金の助成をいただき完成いたしました。何度かの会合の際には、京町家再生研究会、京都市景観街づくりセンタ−,京町家作事組の方や多くの先生方のお世話になりました。
 今回、大船鉾も完全復興出来てない中、会所の購入改修工事と大きな事業を行いましたが、まだまだたくさんの方からのご支援が必要と感じております。
 昨今、京都市内では少子高齢化のため古い町家が空き家となり、取り壊された後はマンションやホテルが立ち並び、京都の風情が無くなりつつあります。そんな中で会所の購入したことが将来、後継者から「会所があって良かった」言ってもらえる様に大切に使っていきたいと感じております。
 このプロジェクトに多くの方にご支援、ご指導いただきましたことに感謝申し上げますとともに、今年の祇園祭では完成した会所と鉾を見ていただきたいと思います。

  <林 邦彦(四条町大船鉾保存会 代表理事)>
 

2017.5.1