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京町家再生研究会 活動報告

2009年9月例会報告

楽町楽家5年間の総括と今後について
日時:平成21年9月12日(土)午後2時〜5時
場所:学芸出版社 3階ホール

 第1回全国町家再生交流会のプレイベントとして、2005年に始まった「楽町楽家」が5年目を終え、一区切りという時期に来たため、今までの「楽町楽家」 の活動とその意義、今後の活動についての例会を開催しました。
 まず最初に松井から、5年間の楽町楽家の始まり、五感に訴える内容、その結果どのような反応があったか、楽町楽家の意義、継続するにあたっての問題点等を 話させていただきました。
 楽町楽家を発想したきっかけは、仕上げに木と塗り壁を多用した家でプロの演奏家が演奏して「とても演奏しやすい」という感想を言ってくれたことでした。
 これが、町家と音楽を結びつける始まりとなり、楽町楽家へと発展していきました。楽町楽家では、当初から友の会の山田さんの助けを借りて、聞く(音楽)、 匂いをかぐ(聞香)、味わう(マリ茶などのティーセレモニー)、見る(展示会)、触れる(見学会)を意識して、その他都ライトや掘り出し物市、住みたい町家を探しに行こう、ひらめい展、SDC町家改修コンペなど、さまざまな催しを通じて町家、特に住宅としての町家の良さを直感的にわかってもらうことを目的として実施してきました。幸い出演者からも、会場を提供してくれた方々からも、参加者からも好評を得ることができ、年々参加したい希望者が増えてきまし た。2年目からはほとんど、友の会の山田さんによって企画、構成、運営されてきたものです。
 楽町楽家で伝えようとしていた町家の良さ、特徴とは、社会的時間と自然の時間をつなぐものであるということです。国や政治、社会、経済など人間が社会生活を営むために人間が考え出したルールなり仕組みで成り立っている世界があります(レベル1)。我々が日常接している世界ですが、この世界を成り立たせているのは、 そのバックグラウンドにある自然であったり、宇宙であったりであり(レベル2)、その中で我々は奇跡的に生きており、社会を作って生活をしています。さ らにそれを包み込む無限の世界があり(レベル3)古代より特に東洋では、この無限の光と自己を同一にすることを、人間の生きているときに向かうべき方向だ、と表現しております。入れ子構造になった、レベル1からレベル3までがあり、町家はレベル1とレベル2をつなぐ建物と位置づけられます。これが町家の 大きな特徴で、現代の住宅はほとんどがレベル1にしか接続点を持っておりません。
  一方人間の成長過程は十二支でたとえられる入れ子構造の輪で説明されます。「子」の時間から始まる1日があり、青春、朱夏、白秋、玄冬であらわされる1年があります。人間の一生は鬼門(起門)からスタートして、青春の学生期、朱夏の家住期を経て、裏鬼門(反転門)に至ります。通常、厄年といわれる あたりがこれにあたるものと考えられますが、朱(あか=あきらか)で社会生活の仕組みをあきらかに理解し、赤い火を一心に見つめていたものが、くるっと反転して、火に照らされている人々の顔やその背景にある景色をみるようになるのが、白秋(林住期)です。この後、古代インドの教えでは、遊行期に入り、配偶者も家も捨て(出家)精神的な放浪の果てに南無(帰依する=同一になる)阿弥陀(無限の光、無限の時間)に達する、となっているのですが、町家は此処まで は面倒見られなくて、白秋までですが、転換点を超えてまで対応できる家となっているところが、大変特徴的なところです。
 一方、アート、伝統芸能では、「技」や「型」を初めは意識して何度も何度も繰り返し、そのうち意識しなくても「技」や「型」ができるようになります。長年の訓練で培った技や型を無意識のうちに自在に使えるようになると、次は全体の流れや表現の強弱などを意識して、ある種の感情や思いを表すようになりますが、こうした意識から無意識へ、さらに高次の意識へと入れ子構造が形成される中で表現されるものが、町家空間の特質とよく共鳴して、どちらもが強調されます。これが町家の中にアートや伝統芸能を入れる大きな理由です。こうして町家の中で行われる催しを通じて、主催者も会場を提供した家の人も、出演者も、そ して参加者も、町家空間の良さや特徴を直感的に感じることができ、過ごした時間の楽しさを印象に持ってくれていることで、「楽町楽家」の本来の目的を果たすことができました。
 楽町楽家を続けていくのには3つのポイントがあります。1つは「無理をしないこと」関わる全ての人が、楽しくできる範囲で行う。2つ目は「主催者側が同 じ目的意識を共有していること」単なる商業主義に走ったりしない、ということです。3つ目は「町家とアートをつなぐコーディネーターが、各会場で適切なキーワードで参加者に町家の良さを意識してもらうようにすること」自主イベントが多くなってくると、単にそのアーティストを見たいために来た人たちにとっ ては、町家が舞台装置の一つにすぎなくなってしまう、というようなことが散見されていました。
 松井の話に続き、山田さんがマイクを持って会場を廻り、参加者から楽町楽家の感想(ライフスタイルと空間を結びつけた他に例を見ないユニークなイベントとか)や、今後も方法を考えて、ぜひとも続けて欲しい、(成熟社会の一つのモデルとして続けてほしい、町家を消費するイベントになりやすい中で、楽町楽家 は一定の役割がある、とか)という発言が多く出されました。楽町楽家の今後を考える上で大いに参考にしたいと思っております。

(記録:松井)
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