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京町家再生研究会 活動報告

2010年6月例会報告

シンポジウム「深化しつづける京町家」

日時:平成22年6月12日(土)
場所:ひと・まち交流館 地階ワークショップルーム

  6年目を迎えた楽町楽家ですが、定番でもあるミニコンサートに関わる演奏者や町家所有者をパネリストに迎えて、シンポジウムをおこないました。京町 家再生研究会理事の宗田好史氏のコーディネートにより、町家と音楽の関係、アーティストからみた町家の魅力、伝統文化を未来につなげていく可能性につ いて、語り合いました。
 リコーダー奏者の坂本洋子氏は奈良市ならまちの町家に暮らしながら、演奏活動をされています。チェンバロをはじめ、ご夫婦が演奏する古楽器がミセノ マなどパブリックな部分に並んでいる様子など、お住まいと音楽活動の関わりについて、いろいろな見方を紹介していただきました。お稽古や接客は古い町家でおこない、日常生活は新しい居住空間でおこなうなど、バランスをとりな がら楽しまれているようです。古楽器はメンテナンスが重要であり、町家に住むのも同じような考え方であるというお話が印象に残りました。
 町家ぎゃらりー妙芸の上田修三氏は、しばらく離れていた町家に再び住むことになり、昔の生活を知り合いに見てもらうという感覚から作品展や音楽会を 少しずつ開くようになったということです。町家は木の家のため音を吸収して反響が残らず、演奏者はかえって気合いが入り、創造的な演奏のできるという 楽しさがあるようです。また、土間での演奏は響きが異なるため、そのような違いを楽しみにする演奏家もいらっしゃるそうです。普段は掃除をはじめ、手入れに力を入れておられるという上田さん、そのようなしつらえも来訪者の気持ちを楽しませているようです。
 情報センター事務局の松井薫氏は楽町楽家の実行委員でもあり、演奏者でもあります。音楽にとって町家が魅力的な理由として、楽器の多くが木で作られ ており、町家と共鳴することをあげられました。もう一つの魅力として倍音があり、人間の耳には届かない高音でも、実は体には作用しており、それによっ て非常に気持ちよくなるという考えもあるそうです。
 馬頭琴、ホーミー奏者の岡林立哉氏はこのような倍音の魅力を実感させる生演奏を聞かせてくださいました。草原でも町家でもない空間でしたが、不思議 な音の響きを味わうことができました。岡林さんは近年京都に住むようになり、神社やお地蔵さんが身近にあるという京都の地域性が日常生活や子育てに よい影響を与えていると感じられているそうです。生活と文化のつながりを感じさせました。
 フルート奏者の園田純子氏は不動産会社にお勤めで、情報センターの一員でもあります。大阪のNPOではサウンドアートに関わる活動もなされていて、生で聞く音の幅広さや豊かさが現代生活には欠けているという現状をお話くださいました。一方、本業では「古い家は長年住まれているので住みやすい」という意識が一般の人々にも少しずつ浸透していることを感じておられるそうです。新しく入る人たち、若い人たちにも、町家の魅力も少しずつ実感されているようです。
 一通りお話しいただいた後は演奏を交えながら、さまざまな話題に花が咲きました。通奏低音として基本にあるものと、メロディとして随時奏でられるも のは町家の生活と文化にも当てはまるのかもしれない、という示唆は興味深いものでした。30名ほどの来場者を迎え、例年になく穏やかなシンポジウムと なりました。
 なお、シンポジウム開始前に、京町家再生研究会事務局長小島富佐江氏から、ワールド・モニュメント財団について説明がありました。2009年10月 にウォッチリスト(危機遺産)に登録された京町家ですが、早速フリーマン財団から京町家の活用に対して25万ドルを支援していただけることになりまし た。一方、別の案件として、以前から釜座町町家(ちょういえ)の改修計画について相談を受けており、また作事組事務局の移転の話も進行していました。 そこでこの支援をきっかけに、釜座町の町家を再生し、活性化するという再生計画が具体化しています。今後は改修の経緯を周知することで皆様にもより深 く町家を理解していただいた上で、活用に向けてご協力頂きたいと思います。引き続きどうぞよろしくお願いします。 

 (丹羽結花)
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