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京町家再生研究会
京町家再生研究会 活動報告

1月例会報告


初釜を楽しむ
日時: 平成27年1月18日(日)
場所: 釜座町町家


初釜の様子
 「初釜とは年の初めのお茶会のことで、濃茶、薄茶、茶懐石など茶道にとっては一大行事である」と云われてはいるものの、私にとっては何処までお点前が出来るか(憶えているか)という超初歩段階のもので、お客様にお茶を楽しんで頂くなどめっそうもない話なのですが、いかに奮闘したかを書いてみました。

 釜座町の町家に炉を切って、お茶のお稽古やお茶会などしてみてはどうかと言い出したのは自分だっただけに、このお稽古、なんとしてもやり遂げねば、という思いはあるのですが、日常生活とは違う所作、動作に戸惑いやら抵抗やら、いろいろ複雑な思いが湧いてくるのを抑えつつ、格闘している状態であります。

 さて、一月十八日日曜日、朝十時集合ということで、少し前に町家に行ってみたところ、まだメンバーは誰も来ておらず、松井師匠と森さんだけ、落ち着いた風をして話をするが、内心は落ち着かず、そこへコートに袴の大下さん登場、「その姿、プレッシャーやで」と以前正装をして私たちの初めての茶会に来られた客のことを思い出す。あの時も、鐘(建水)が鳴るやら、泡が立たないやら、揚句に「お道具拝見」やら、あれ以来、トラウマになってしまい、「大下さん殺生やで」と逆恨み。そうこうするうちに茶道部の仲間勢揃いし、森村氏が「金鳳宿龍巣」と書いた掛け軸を取り出した。正月にふさわしい、めでたい軸らしい。「金の鳳凰は龍の巣に宿る 藪内流六代 比老斎(江戸中期)」であります。「花器は青銅龍耳花入 松花堂好 秦蔵六造り」「蓋置 突羽根蓋置 高木治郎兵衛作」「風炉先屏風 名物裂屏風」「花はみやこどりという椿」でございます。と覚えて変わり番に話すことになっているがスラスラ出てくるはずもない。ここで釜座町茶道部のメンバーを紹介させて頂きます。只今6人、一際熱心な井上さん、道具や美術に強い森村さん、真面目で慎重な吉田さんと六十の手習いの私の釜座町4人組、そこに初めから極まっている三木さんと新入の森さんの作事組女性2人。お稽古の時は楽しく、和やかそのもので、正座もそこそこ、冗談、失敗飛び交う楽しいひと時なんですが、今日はそういう訳にはいきません。

 いよいよ十一時になり、初釜開始。初めからそんなにお客さんは来ないと踏んだ私は一番バッターを選んで、待機。一番に入ってこられたのは、当町の釜師、高木治郎兵衛さんの奥様と町家のお隣さん、そこに袴姿の大下さんと朝日新聞の記者。もうあきまへん。茶室の扉を開けるところから、すでに位置が違う、入って水差しをおいて、茶碗と棗、最後に柄杓と建水を持って、扉の前で一回りするのを忘れて一直線で正座、鏡柄杓して、蓋を取り、棗、茶杓を清めたまでは出来たように思ったが、次が出てこず、ストップ、お正客に次のことを教えてもらい、茶筅通し、やっとのことで、お茶をたてるもなかなか泡立たず、途中から、半頭が、掛け軸やらの説明をはじめ、そちらの方に皆の気が移ったのは良いが、なかなか終わらず、二服目が勧められない事態発生。「お茶が冷める」と言ってやっと二人を終えたところで、点出しのお茶が出てきて「おしまい」に突入。しびれを堪えて茶器を片付け、扉のところで、総礼。ああしんど。次はちゃんとやらねば。と思いつつ他のメンバーがどうかは、扉の内で分らない。皆なんとかやり遂げたみたい。上の階では松井師匠が、本邦初のコーヒー点前を披露、二階に上がった人は皆楽しげに降りてくる。昼休みに私たちも体験。豆煎り、豆挽き、煮出しと作法めいたお点前に皆、納得、円の真ん中にコーヒー豆を張り付けた色紙もユーモアたっぷり、意味ありげで和やかな気分になる。昼が済んだところで、再登板、今度は、最初よりはましな出来にホッと一安心。町内の子供も来てくれて釜座町のお客は全部で十一名。皆それぞれに安堵の表情。また次回? 少しは上達しているかな。

 結びに、今さらながらやっぱりお茶は奥が深い、楽しく飲めばよいと言いつつも、知識と教養が必要。季節に対する花やお菓子、軸と花器、茶碗の形、茶釜に屏風、茶人と歴史、道具、和歌、短歌、俳句、漢詩等々、知れば知るほど日本文化が凝縮していることへの驚きと釜座町という居場所に殊更感慨を持った一日でした。

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