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京町家再生研究会

「おつきあい」から「連携」へ

小島 冨佐江(再生研究会事務局長) 
 京町家再生研究会が発足して15年を迎えた。当初30名ほどの会員で設立された会であったが、今では4つの組織がそれぞれに役割を分担し活動を続けている。町家がなくなっていくのには様々な問題があり、それを多角的に見ながら再生を進めていくという理想的な動き方ができるようにと皆が望んだ形が時間とともにできつつあることからも、再生研究会の15年が見えてくる。
 平成6年、7年に実施した京町家の悉皆調査によって、京都にはまだまだ多くの町家が現存しているということがあきらかになった。その調査を引き継いで、京都市による京町家まちづくり調査が調査地域の規模を大きくして実施されたことは今も記憶に新しい。多くの市民、団体がボランティアとして調査に参画し、あちこちで調査をする風景がまちなかで見かけられた。これらの調査が町家を多くの市民に知らしめることになったと考えている。
 京町家まちづくり調査の調査ボランティアを束ねたのは設立されたばかりの財団法人京都市景観・まちづくりセンターだった。元小学校の建物には多くのNPOや諸団体のメンバーが常に出入りをし、できあがったばかりのまちづくりセンターの活気、熱意が感じられた。行政・民間という垣根がまちづくりセンターよって徐々に低くなっていくことに期待が高まった。そのときから、京都市景観・まちづくりセンターとの「おつきあい」は今も続いており、町家に関する様々な場面で協力関係を持ち続けている。
 今回、まちづくりセンターとの関係について考えるというテーマが与えられた。最初に述べたように、センターとの「おつきあい」の時間は長い。京町家調査という同じ目的に向かって進んだということでは、関係はかなり密接になっているようでもあるが、意見のずれが折に触れ気にかかる。そのずれがどこにあるのか、それがわかれば今後の「連携」の仕方が見えてくるだろう。そのためにまず我々がまちづくりセンターに何を望んでいるのかを整理してみる必要がある。京町家再生のために様々な活動をしている我々と京都市全域のまちづくりのための組織であるセンターとはまったく違った役割があることは明らかである。また、財団法人として設立されたとはいえ、京都市の職員の出向でかなりの人員を満たしているセンターは限りなく行政に近い存在として受け止めているのも事実である。そのような性格を持つセンターと今後どのように向き合うのが望ましいのだろうか。

・お互いの役割を明確にし、得意な分野を分担し合う。
・同じテーマについては活動の時間を共有する。
・組織としての個性を発揮した活動をする。
・組織の構成員は各々の責任を明確にする。
・常に議論を尽くし、皆が納得した活動をする。

 思いつくままに私が理想とするNPOの形を列記してみたが、これは組織の中だけではなく、組織間においても同じことが言えるだろう。京都には多くの組織が活発な活動をしている。その活動を通していろんな組織との交流や意見の食い違いが日々生じるが、私はお互いが前述のような考え方を持っていればそれぞれの個性を尊重した効率のよい活動ができるものと信じている。まちづくりセンターにも是非我々NPOと目線を同じにして、仲間としての役割分担を持ってもらいたいと思っている。
 町家ブームといわれる昨今、それでも京都のまちなかからは町家が減り続けている。減少傾向に歯止めをかけるためにも多くの知恵を出し合い、様々な問題に的確に対応できる迅速な動きが望まれている。果たして我々はお互いにお互いの個性を尊重し、議論を尽くした納得を得ているのだろうか。単なる義務としての会議を消化していないだろうか。日々移り変わる状況にアンテナを張り巡らせているのだろうか。もう一度考えてみたいことである。

 まちづくりセンターに多くのNPOや団体が自由に出入りし、そこここで議論をしている。町家の問題については京町家再生研究会が幹事になって研究会を運営している。センター職員も専門家が増え、それぞれの専門性を生かしたアドバイスが聞ける。町家やまちづくりにかかわることは曜日別にNPOのメンバーが常駐し、再生研には○曜日にいけば話が聞ける、電話やメールを駆使した相談連絡網が整備された、いろんな質問はまずまちづくりセンターの○○さんに聞けばどこで何をすればいいのか教えてくれる、○○さんはまちセンの顔だから……というような楽しい景色を想像している。
 まちづくりセンターをキィステイションにした真の意味での連携が実現するのはいつごろのことだろう。

2007.5.1