作全協姫路大会と今後に向けて<梶山 秀一郎(京町家再生研究会幹事)>
作事組全国協議会姫路大会が去る10月29,30日に開催された。町家を直して守る各地の活動グループが連携と協働により、法制度などの共通課題を克服することを目標に掲げて、作全協が設立されたのが、2009年2月であった。実はその前年、その旗印のもとに駆けつけた活動グループが集まり、準備会を開催した地が今回の姫路であった。これまでの大会を概観するためにテーマ、シンポ及び分科会の内容を並べてみる。 【第1回京都】
【第2回八女】
【第3回金沢】
【第4回宮津】
地域の町家は地域で守るという観点から、大会の内容も地域に任せてきた。その結果、大会は地域の活動の進み具合や市民の認知度及び行政の協力度を反映したものとなった。そこからいくつかの問題点も見えてきた。 ひとつには、当初、各地域での大会が職人集団設立のきっかけになればと考えていたのだが、各地域はその前に克服しなければいけない課題を抱えていた。行政が積極的に伝統工法の職人の育成にかかわる金沢は別として、伝統工法を担える大工や他の職方の不在である。 ふたつには、伝統木構法が建築基準法に絡めとられていて、一方で伝統木構法と建築基準法の折り合いをつける研究や実験が公表されているなかで、やむを得ないことであるが、立ち位置や改修方法を決めかねている地域もある。 みっつには、改修実践がこれからということで、住み手や一般市民への普及も未だしという地域も多い。 また反省点としては、地域に任せてきた結果、活動が進んでいるところはそれを披歴する場になりがちで、一方これからというところは焦点を絞り込めずといった、いずれも町家を伝統構法で改修する職方の意見交換と交流の場、という趣旨から外れがちなことであった。 そうしたなかで第5回の姫路大会が決まった。姫路は設立準備会が開かれた08年以降、調査研究の成果はあげていたが、改修実践はまだ実績がなかった。大会を活動再開のきっかけにということであった。 問題点や反省を踏まえ、今回は準備段階から意見交換や姫路に出向き、町家の状況を確認しながら、京都と姫路の職方同士の意見交換の場を設けるようにした。その最終の協議の場で姫路から、市民にその存在が殆んど知られていない職人とその語り口を市民に知ってもらうことをテーマにしたいとの提案があり、それを受け、一般市民に職人を通して町家の良さを知ってもらうことを大会の主なテーマにしようということになった。 【第5回姫路】
主なテーマを果たす場がシンポである。そのためには市民に集まってもらう必要がある。組織的に呼びかける団体がないことから、手立てはマスコミや行政の広報と口コミだけである。結果は一般市民57名の参加を得た。町家再生活動がこれからの状況で、かつ限定的分野であることからすれば上々である。 進行役は町に入り込み、町のつれづれを絵と文でつづる冊子を発行し続け、これまでの自宅の改修で業者に対応に不満を持つ、建築の素人を自任する版画家である。パネラーは姫路周辺−姫路中心部には伝統木造を手掛ける職方はいないとのこと−で伝統木造の新築を手掛ける若手の工務店や大工、それとコメンテーターの荒木さんである。 「伝統木構造の会」に所属する大工たちが淡々と語る伝統木造の話に、初めて聞く一般参加者は戸惑ったかもしれないが、姫路の活動再開の初仕事であるSm邸改修工事の施主夫妻が、改修して残そうとした経緯や改修後の暮らしへの夢を、フロアーから語る姿は一般市民の関心を引き付けたと思う。 今大会の成果は今後の姫路の活動を見守るしかないが、今後の作全協のあり方に方向性を与えた。すなわち大会を地域の活動と市民、行政−例にもれず市長が参加−とを結ぶ場にするということである。 2017.1.1 |