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はじめに京町家再生研究会京町家作事組京町家友の会京町家情報センター



 11月18日(日)10:00より、吉田家、小島家、矢尾定、釜座町家、など京都中央部に点在する町家を会場に、参加者が自由に巡る形式の「記念茶会」が催されました。
 それぞれ雰囲気の異なる町家巡り、見学のみであっても愉しい企画でしたが、更にその座敷にて、実際的な使い方を体験できる機会です。さっそく友人を誘い参加しました。

●釜座町家
 玄関で作事組の方々のお出迎えを受け、二階へ案内されると、この町家を活用して茶道の稽古に励んで来られたお町内の方が、「まだ慣れていませんので……」と言い添え、盆点前でもてなして下さいました。初々しい丁寧なお点前の一服は、とても心の籠った美味しいお服加減でした。

●吉田家
 こちらは、歴史的意匠建造物、景観重要建造物の指定を受け「京都生活工藝館・無名舎」として運営をされており、今回の茶席の席主はご当主 吉田孝次郎氏。周知の通り、現在、祇園祭山鉾連合会理事長として活躍されています。

床の間の作品と花
 表屋造りの町家に入ると、「店の間」が待合い。数々の美術工芸品を拝見しながら談笑すること暫し。十数人になったところで奥座敷の茶席へ。如何様な趣向かと心躍らせお床を拝見すると、どうやら「見立ての茶会」です。パリのエッフェル塔で実際に拓本?したという作品が、ほの暗い床の間に掛け軸代わりに掛り、花入れには通年栽培の黒いダリアとドウダンツツジ。その花のシルエットがモダンインテリアの雰囲気を漂わせ、不思議なことに、町家に洋風デザインがしっくり馴染んでいるのです。
 総礼で茶会が始まると、今席のお点前は 京町家情報センターの城 幸央氏。「ようこそ!」と半東にお出ましになった吉田氏の説明に依りますと、蓋置はインドネシアの大きな「トンボ玉」。棗の材は紙、黒塗りに内は金箔仕上げのフランス製の蓋物。等々。三十年程前、海外を旅し入手(元より茶道用を想定して購入)された品々に光を当て、組み合わされたとのこと……。

吉田家の薄茶席
 袴姿のお点前は静寂の構え。雰囲気は益々盛り上がります。
 やがて正客の前に運ばれて来たお菓子は、直径60cmもあろうかというスペインの大皿に、大極殿の「錦秋」が真中に一つ。一同おもわず、感嘆の声!をあげてしまいました。本来の用途にはこだわらず、次々繰り出される茶碗も、実に味のある素敵な器ばかり。本質を見極める審美眼を以て、自由自在に組まれた見立てのお道具に、意表を突かれた茶会でしたが、「どう見立てるかは、町家もしかり!」と示唆いただいた気がしました。

●矢尾定

矢尾定の点心
 お昼、新町通りを下って〈矢尾定〉へ。数年前改修された町家造のお店に入ると二階が「点心席」。色鮮やかな柿の葉と菊の花弁を散らした、雅な「点心」を、三々五々歓談しなら美味しく頂きました。
●船鉾町会所
 その後、伝統工法で改修され、どっしりした構えの〈船鉾町会所〉も見学。この町会所は、絞りを商う会社が、祇園祭り期間中のみ町内に明け渡す条件で賃貸契約され、上手く共存されていました。

●小島家

小島家の煎茶席
 お馴染みの小島家には煎茶席が二席設けられていましたが、黒光りする廊下を通って案内されたのは中庭側の茶席。初めての煎茶に友人共々緊張気味でしたが、お点前の先生の親しみ易いお話振りに助けられ、気軽に質問をしたり、茶碗に少し注がれた「旨味凝縮」の煎茶に感動したり、珍しい茶器を眺めながらほっこりした一時を過ごしました。
 別室では、漆青年部会メンバーの展示もあり、漆芸家 三木啓樂氏から、伝統の継承と時代に即した新作に取り組む青年部の実状も伺いました。「皆様、購入使用することでご支援下さい。」とのお話しでした。

●木田安彦美術館

木田安彦美術館
 最後に立ち寄ったこの美術館は、昭和初期の良質な材を贅沢に使用した大塀造仕舞屋形式の町家。木田安彦氏の画風が何とも良く似合う、見事に改修された町家です。独特の懐かしい風情に心落ち着く美術館でした。


 半日、茶会を巡って感じるに、やはり町家も「不易流行」。不易をより盤石にするためにも、流行が肝心。 現代の町家を思う時、キーワードは「審美眼」なのかも知れません。