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京町家情報センター
■京町家に移り住んで…飯高邸

 今回は、堀川今出川近く、白峯神社の北の方にある町家で、ほぼ1年前に学生たちを中心にした「おそうじ隊」で表のべんがらの塗り替えなどをしたところです。その時おそうじ隊にも参加していた学生たちがインタビューしました。当日は「今村麻香屏風展」の開催中で、その会場でのインタビューです。
〈松井 薫(情報センター事務局長)〉
──以前はどのような家に住んでいらしたのですか。
 京都に来る前は、東京に住んでいました。東京は私にとって、人が多く、臭いのきついところでした。渋谷や新宿など人が多い所では気分が悪くなる時もありました。そんなこともあり、他の土地に行きたいと思い、大学編入を機に京都に来ました。京都に来てからは、ここに住む前は岡崎のほうの長屋に住んでいました。

──町家に住むきっかけは何だったのですか。
 自分の中で住みたい家の条件がありました。まず生活と仕事が共存可能な間取りであることです。その上、何かプラスアルファになるもの、─人が集まれるとか─があればよい、という条件で特別町家を探していたというわけではなかったんです。大学時代に建築を学んでいたので、町家に興味はあったんですが、町家に住みたいという強い希望ではなく、逆に本当に今自分の住みたいと思える条件を満たしていたのが町家だったということです。

──実際、この家に住んでみてどんなことを感じますか。
 今、ギャラリーをやっているんですが、これは、東京からこちらに来て、京都に知り合いがいないので、これから先、京都でやっていく上で友人がほしかったこともあり、人の集まることのできる場所を家の中に作りたいと思って始めました。ギャラリーをやっていると、人のつながりが徐々に出来ていくことが実感できます。
 この家で一番気に入っている所は、庭ですね。庭があると空気が動くし、土のにおいがするし、空があります。私は空気の動かないところが耐えられないのですが、この家では空気の動きが感じられます。そして、自分の居場所は自分で作ることができます。例えば、食べる場所にしても、気分次第で庭で食べることも部屋で食べることもできます。どこの部屋でもくつろげますし、家にずっといたくなりますね。自分次第でいろいろ変えられる分、生活一つ一つの行動についてすごく考えるようになりました。

──町家の冬は寒いと聞きますが、いかがですか。
 もともと冬は寒いものです。だから、寒いということを苦痛に思うことはなかったです。もちろん寒くて眠れない時もありますけど。ただ冬が寒い分、春の暖かさがすごくうれしいですね。この家に住んで、春がこんなにうれしいものだと初めて知りました。もう、全身で春〜!っと感じることができます。

──今、屏風の展示をなさっていますね。
 今回の展示の新しい試みとして、中庭も含めて展示を行っています。前回まではギャラリーの外側に庭があり、庭は展示を見るついでに見るという構成になっていました。今回は離れの1階に展示してある一番大きな屏風を庭ごしに母屋から観る事ができます。あの屏風は自然の光の中で展示したいという思いがあり、今回は中庭を含めてギャラリーという形にしました。中庭を取り込んだ展示を行うことで、展示にダイナミックさが生まれました。そしてこの屏風の作家の思いとも一致して、町家での展示を実現することができました。

──古い町家に新しいアイデアを取り入れて、町家を現代に生かそうとする試みが、とても新鮮に感じられました。