今回は、この「京町家通信」に以前にも紹介されていた、大井邸─子どもと川とまちのフォーラムです。実はここのオーナーの大井さんにこのほど京町家情報センターの代表になっていただきました。そのご紹介も兼ねて、大井さんと借り手側の子どもと川とまちのフォーラムの事務局長、小丸さんにお話を伺いました。 〈松井 薫(情報センター事務局長)〉
――この町家は、以前はどのような状態だったのですか。 大井さん もともと住んでいたおじが亡くなった後、空き家になっていました。そこを3年ほどは人に貸したりもしていたのですが、何しろ傷みがひどく、家も傾いていたので、改修も含め何か利用する方法はないかと考えていました。そんな中で、京町家情報センターや作事組の方々と知りあうことができ、改修して町家としてもう一度活用できそうだということになりました。 ――今回の改修の際には、かなり大幅な改修をされたのでしょうか。 大井さん 基本的な造りは変えていません。壁や天井に張ってあった合板を剥がしたりしましたが、基本的にはもともとの町家の状態に戻す、ということをしました。当時は合板の方がきれいだと考えられていたのだと思いますが、こうしてもとの姿に改修してみると、そのままで十分美しかったのだと感じます。 ――小丸さんにもお聞きしますが、なぜ、町家をフォーラムの事務所として利用したいとお考えになったのですか。 小丸さん 事務所を借りるにあたって、ビルの一室ではなくもっと自由に人が集まれる場所がよいと思い、できれば古民家や町家のような場所を借りたいと思っていたんです。 町家という場所を選んだのは、古くからあった町家をもとの姿に戻していこうという考え方と、私達のフォーラムの、川をできるだけ自然の要素を含んだものにしていくという思いには共通するところがあると思うためです。 大井さん 町家とこのフォーラムの方向性が、うまく合ったということですね。 ――今実際に事務所として利用されていて、どのようなことを感じますか。 小丸さん やはり、先程も言ったとおり、人が集まりやすいと感じます。また、ここを訪れた方は、ご年配の方なら「懐かしい」、若い女性などは「おしゃれ」、子ども達は「新撰組に出てくる家みたい!」とそれぞれ楽しんでくれているようです。 それから、私ひとりで仕事をしている時、いろいろな方が訪ねて来られても、ご町内の人がそれとなく見ていてくれるという安心感があります。マンションやビルではそのようなご近所の方々とのつながりはほとんどないですから、町内のよさを改めて感じますね。 ――今のように町家が再生され、活用されているのを見て、やはりこのような形で残してよかったと思われますか。 大井さん はい。それは思います。もう使えないだろうと思っていた家が、こうして利用すれば、また30年・50年と使える。消えていくと思っていた町家が、こんな風に活用できるのだということを実感しています。 ――どうもありがとうございました。 |