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京町家情報センター
京町家に移り住んで──清々麦々(きよきよばくばく)(金城邸)

 烏丸御池近くの、以前貸し本屋さんだった小さな町家が、1年ほど前、住みながら一人でやっている小料理屋に生まれ変わりました。ちょっと地味な所で1年経ってみての感想を学生達に聞いてもらいました。
〈松井 薫(情報センター事務局長)〉

──ここに来るまでのいきさつを教えてください。
 ここにお店を開く以前は、河原町三条あたりで同じように飲食店をしていました。そこから、移転という形でこちらに移ってきたんです。以前のお店は5坪程と本当に小さく、まるで基地みたいだと言われていていました。それがいいと言ってくれるお客さんもいたんですが、やはりそこでは少し手狭になったのと、周りのお店とちょっとお客さんの層が違うということもあって、移転を考えていました。その時、京町家情報センターを通じてこの町家と出会うことができました。
 小さな町家か古い家ということで探していて、ここを見せてもらった時に、ここがいいな、ここならやれそうだなと思ったんです。

──ここでは、1階をお店として使われ、2階にお住まいですが、以前はどのような所にお住まいだったのですか。
 ここに来る前はずっとマンション住まいでした。ここに移る一つ前に住んでいたマンションが、とても日当たりが悪く、植物も枯れてしまうようなところでした。この家に移ってから観葉植物が元気に育っているのを見て、前よりもずっといいじゃない!と思っています。
 暑さや寒さも、それほど気にならないですし、虫ともまあ仲良くやっています。「快適」とは言い切れない部分もありますが、住んでいくのに十分な場所ですね。

──住みながらお店をしていて、近所の方から何か反応はありますか。
 一軒家に住むのが初めてで、ご近所づきあいをあまりしたことがないんです。だから、最初は道で近所の人に会っても、誰が近所の人で、誰がそうでないのかわかりませんでした。隣に住んでいたおじいちゃんは、挨拶ついでに話しかけてくださって、その後何かと気にかけてもらってうれしかったですね。でも、先日そのおじいちゃんが亡くなられてしまって。お葬式の時に、テントを建てる場所がないと困っておられたので、店をお休みにして店の前にテントをたててもらいました。これをきっかけに、ご近所の方の顔と名前が一致するようになり、隣の方とも挨拶をする機会が増えたんです。でも、まだわからない人もおられるんですけどね。どこまで近所づきあいをするかは自分次第だと思いますし、自分のできる範囲でいいんじゃないでしょうか。

──このような形でお店をされるようになって、感じていることはありますか。
 前のお店に比べて、お客さんのいる時間が長くなりました。ゆっくりとしていってくれます。前のお店から来てくれていたお客さんも、場所が変ってよかったと言ってくれています。それは本当によかったと思っています。
 ここで始めてしばらくたった頃、働く場所と、住んでいる場所が一緒ということで、オンとオフの切り替えがうまくいかないように感じて、しんどくなってしまったこともありました。2階にいても、どこかでずっと仕事のような気がして。でも今では、それも割り切ってやっていけています。店の外観も以前の町家のままで、あまりお店らしい感じではありません。そのためにお店だと気付かずに通り過ぎていってしまう人も多いですが(笑)。お店だと気が付いて来てもらった時に、お客さんが家にいる感じでのんびり、わいわいとやってもらえたらいいなと思っているので、それでいいのかなと思っています。ここで少しオフの時間を持ってもらって、また明日がんばろう、と帰ってもらえたらうれしいですね。