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京町家情報センター
京町家に移り住んで──村崎邸

 若い男性サラリーマンが、町家に住みたいと京町家情報センターに尋ねてくるのはごく小数なのですが、今回の村崎さんはその少数のうちの一人です。町家に住みだして3ヶ月ほど経過して、生活に対する考えかた、感じ方が劇的といっていいほど変化した様子をいつもの学生がお聞きしました。
〈松井 薫(情報センター事務局長)〉

──町家に住もうと思ったきっかけは何かありますか。

村崎邸
  以前は、普通の……なんと言ったらいいかわからないんですが、同じ形の家が並んでいるようなとにかく普通の家に住んでいました。ただ、小さい頃から、よく母に京都や奈良のお寺や神社に連れて行ってもらって、お寺などを、かっこいいな、とか、中に入ったときのひんやりとした空気が好きだなと思っていた記憶があります。それとおばあちゃんの家が、こんな風に畳の部屋があってという古い民家でした。
  そういう下地があったからかもしれませんが、会社に入って何年か経ってくると近代的な高層ビルで、朝から晩まで空調が効いていて自然の空気を感じることが出来ない、電気が煌々とついていて、朝早くから深夜まで会社にいなくてはならない……そういう環境をなんだか人間的でないなあと思ってしまったんです。
  また、大学は京都の大学に通っていたので京都は好きで、就職して大阪への勤務になってからも度々京都には遊びに来ていました。そんな時に町家を改装したレストランに出会い、町家という存在を、もうちょっと調べようとインターネットで検索したら、京町家.netというのを見つけて、京町家友の会へすぐに入会させていただきました。町家に住むことを考えたとき、私自身ではなかなか踏み出せない部分があったのですが、その時情報センターの方が「思いきって一歩踏み出してみたら」と言ってくださり、それが大きな後押しになりました。

──では、はじめは町家に住むということに対する不安も大きかったのですね。
  そうですね。住むということになると、ぼろぼろの状態から自分で改修して住まなければならないという話を聞いたりしていたので、そんなことをできる自信もなかったですし、一人で家一軒の全てのことをしなくちゃならないということにもやはり不安がありました。

──実際に住んでみて、そういった不安かなくなっていったのでしょうか。
 はい、不安よりもここに住むことのよさを感じる方が大きいですし、問題が出てきたときにもどう対応するかということを考えられるようになりました。
  大家さんにも恵まれていたんだと思います。この家も、実際はじめに見たときには壁が剥がれかけていたりしていたのですが、大家さんが壁の塗り直し、畳の表替えなど住める状態まで手を入れてくださったんです。
  また、ここに住むようになって、仕事の面、考え方の面でも、変わった部分が大きいと思います。早く家に帰ってゆっくりしたい! という思いで仕事を早く片付けられるようになったり。(笑)
  それから、周りへ感謝の気持ちを持てるようになったとも感じます。それはもちろんここに住む過程で直接関わってくれた人への感謝というのもありますし、やはり母親の存在にもつながっています。連日帰りが遅くなっているときに一言手紙を書いて入れてくれる近所の方の気遣いも、本当にうれしく思っています。ご近所との付き合いも、以前は難しいことなのかなと思っていましたが、そんなことはなくて普通に挨拶をしたらいいんですよね。
  以前は、わりと引っ込み思案の傾向があったのですが、今は、将来に向かっての展望が開けてきましたし、今の会社でやってることが、どういう位置づけなのかもわかるようになってきました。何よりも、出来ない理由を探すのではなくて、どうしたら出来るかを考えるようになってきたことが自分の中では大きな変化です。
  大げさではなくて、ここに住むようになって人生変わった、と思っているんですよ。家にいながらいつもにんまりしてしまいます。(笑)

──本当に楽しそうにお話をされる様子を見ていると、改めて町家の力ってすごいな、と思わずにはいられませんでした。

2005.9.1