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京町家情報センター
京町家に移り住んで──朴(ぱく)邸

 ひょんなことから、町家に住むことになったパク先生(京都産業大学の若い経済学の先生)。学生たちと壁の紙貼りや坪庭づくりに大奮闘した様子も含めて、町家に住んでみての感想をインタビューしました。
〈松井 薫(情報センター事務局長)〉


ファサード
──町家に住むに至った経緯を教えていただけますか。
 少し前まで、町家には全く興味がなかったんです。ただ、住んでいたワンルームの部屋でエアコンを使わずにいたからか、カビがでてしまったんですね。これは困ると思っていた、そんな時にちょうどテレビの「劇的ビフォーアフター」で、廃墟のような町家を改修して見ちがえるように直しているのを見たんです。これを見て、これだけ古くなった家も直して住めるんだとわかったし、和風建築の暮らしにも魅力を感じました。
 その後は自分で街中を歩いて、近所の町並みを重視しながら町家を探しました。売り物件を見つけて不動産に連絡を取ったりもしましたが、買うのは大変そうなのでやめました。それで、以前お酒の席で知り合った京町家情報センターの人を思い出して、センターで借家を紹介していただくに至りました。

――当初から町家に住むなら改修して住む、ということを考えられていたのですね。
 さすがにそのままの状態では気持ちよくないので、多少は改修にお金を使うつもりでした。今ここには賃貸という形で住んでいますが、他人のものにお金をかけるなんて、と言われることもあります。でも抵抗感はなかったですね。更新すれば10年はここに住める契約の形になっているのですが、改修費も10年で割れば家賃にわずかな上乗せですし、それで快適に暮らせるのならいいかなと思います。持ち家でも20年もすれば古くなってしまいますしね。

――改修はどのように進められたのでしょうか。
 見た目を本来の姿に戻すことを目標に、土壁の塗り替えや、畳の表替え、紙を貼る壁の下地などは職人さんにお願いしました。壁に貼る紙や糊、柿渋や松煙についても、具体的なことはその都度情報センターの方に教わりました。格子のペンキ塗りや、和紙貼り、柿渋塗りは、有難いことに学生たちも手伝ってくれました。
 改修はすぐ簡単に終わると想像していたのですが、実際やってみると手間も時間もかかって大変でした。完成の前日は、みんなに夜遅くまで残ってがんばってもらいましたね。正直、こんなことなら全部職人さんにお願いすればよかったと思うことも。プロはやっぱり違う(笑)。でもいろいろな人の助けを得て、少しずつ形ができてくるのを見るのはうれしく、とてもいい経験でした。表替えした畳が入った瞬間は、まさに劇的でしたよ。

――町家に暮らし始めて不便を感じることはありませんか。
 ゴキブリが多いこと、ですね。しかも大きさが全然違う(笑)。
 でもそれくらいで、他にはこれといってありません。この家にはお風呂がありませんが、近所の銭湯の方が快適です。以前から夏も冬も冷暖房は全く使わず、椅子ではなく床座、家具はあまり置かない、という暮らし方だったので、町家に住むようになったから特別に変わったということはあまりないんです。クーラーは改修時に撤去したのですが、夏もこの一階の奥の部屋は風が通って涼しく、扇風機だけで十分にしのげました。

――町家だからといって身構えるのではなく、ごく自然に町家の生活を楽しまれているのがよくわかりました。ありがとうございました。
2005.11.1