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京町家情報センター
京町家に移り住んで──野村邸

 大きな通りから1本入った、静かな通りに郊外型の戦前木造住宅が並んでいます。その一角にお住まいになって、もうすぐ2年が経とうとしているお二人にお話を聞きました。

松井 薫(情報センター事務局長)

―すっかりこの空間になじまれているように感じましたが。
 そうですね。とても落ち着いて暮らしています。以前は西日の当たる、通りに面した普通のマンションに住んでいました。そのころは周りの音とか、人の声とかがうるさかったのですが、今は子どもの声がよく聞こえてもうるさく感じませんし、中で音楽を聞いていても外にはほとんど聞こえません。土壁とか木の柱や天井のおかげかも知れません。
 哲学の道を散歩しながらこのあたりに住みたいね、と探し出したころは、町家に住むなんてことは夢のまた夢でした。町家が普通の家賃で借りられるということを知らなかったものですから。ある時、賃貸の町家があることを知り、情報センターへ登録しました。それから1年余り、ようやく出会えたって感じです。探し出してからはマンションに住むことは全く考えませんでした。ここは日当たりもいいし、何よりも庭と縁側があるのがうれしいですね。13才になるメス猫が前よりもずっと元気になりました。この家を一番楽しんでいるかもしれません。

野村邸
野村邸

―七輪に炭が入ってますね。
 炭はいいですね。あたたかいし、魚や野菜など焼いて食べてもおいしいし、こうしてやかんをかけていると湯気が心地いいし。夏でも丸型のちゃぶ台の真ん中に七輪用の穴の開いているのを使って炭火を楽しんでいます。この家では魚を焼いても、においとか全く気になりません。消臭スプレーとかしなくても、においは抜けていってくれます。町家は冬が寒いと聞いていましたが、コタツを入れているとあたたかいし、それぐらいで十分すごせます。夏は以前のマンションは西日が当たってすごく暑くて、夜通し扇風機をつけていましたが、ここはとても快適でクーラーもほとんど使っていません。それと気がつけば家の中からプラスチックのものがなくなって、器ひとつとってもていねいに作ってあるものを選ぶようになっています。炭火にしても庭にしてもスイッチひとつでことが済むわけではないけれど、手間がかかるという感じではなく、どこも手をいれるほどよくなる、という感じがして、今まで住んだ中でここが一番快適です。

―このあたりは桜がきれいなところですよね。
 本当にぜいたくですよ。桜もあるし、もみじもきれいだし、新緑のころもすばらしい。居ながらにして季節をすごく感じるようになりました。歩いていても、梅の枝に芽が出てきたとか、つぼみが膨らんできたとかに目が行くようになり、何かうれしくなるんです。自然といえば、いたちが出てきたのにはびっくりしました。卒倒しそうになりました。自然と共存してるのですね。この家に引っ越してから、友達をよく呼ぶようになったのですが、来た人は口をそろえて、くつろげる、落ち着くといいますね。家の中の光も障子とかもとても美しいと感じますし、そんな中でゆったりとした気分で暮らせるのがなによりすばらしいです。

―最後に、京都の町家を外の人が評価しているが、京都の人がもっとよさを知ってほしいし、とりあえず、壊さないでほしい、という言葉が耳に残りました。

2007.1.1