琴の弾き語りという大変ユニークなスタイルで音楽活動をしている北川さんが、町家を探しに情報センターへやってきたのが今年の初め。あこがれの京町家に移り住んでやっとおちついたところの北川さんにお話を伺いました。 松井 薫(情報センター事務局長) ──町家の生活に慣れてきましたか。 はい、毎日楽しく生活しています。この家とは出会うべくして出会った気がしています。情報センターでいくつか紹介してもらって、よさそうだから見に行こう、と思っていたところがあったのですが、すぐに決まったりして、ぐずぐずしてられないと思ってました。この家は、はじめは自分には立派過ぎると後回しにしていたのですが、一度見せてもらったら、もう「ここに住みたい」という思いがあふれました。それですぐに決めました。ここは、大家さんがいつも隣にいてくれますし、町内の行事とかも教えてもらえます。引っ越して早速、熊野神社のお祭りを体験しました。家の前を馬が2頭も通ったのですよ。
小さいころから、古いものが好きで、近くで家の取り壊しがあると、小さな水屋たんすや古い木の机などを持って帰って集めてました。そうそう、蚊帳(かや)なんて、同年代の人たちは知らない人が多いですよね。でも、私は蚊帳を吊って、中に入ったりしてましたので、よく「変わってるね」なんていわれていたのですが、こちらでは、そういうことに共感してもらえるし、理解してもらえるのがうれしいです。音楽活動を始めて、一時期、大阪で小さな部屋で曲を作ったりしていたのですが、曲が作れなくなってきて、古い建物で詞をかいたり曲作りをしたいと思って町家を探し始めたのです。ここに住んでからは、どんどん曲を作りたい気持ちが高まってきています。部屋とか環境がこんなにも影響するなんて考えてもみませんでした。 ──住み始めて生活での変化はありますか。 以前よりよく歩くようになりましたね。鴨川も近いので、よく歩いていきますし、家の中でも、階段なんかも1日に何度も往復します。町家に住んでからは、友達にも来てほしいですし、そうなると、自然と掃除もするようになりました。料理もいろいろ工夫して作るようになりましたよ。人として生活してるな、って感じがしてます。そういう生活が楽しいですし、生活の中からいろいろなものや人に出会えたりします。町家の中は、なにより自然に循環していて居心地がいいので、友達が居座る傾向がありまして、たまり場になるのではというイヤな(?)予感がありますが。 ──今回の楽町楽家では演奏者として参加してもらいましたが、いかがでしたか。 とてもおもしろかったです。聞いている人との距離もすごく近いし、伝えたい気持ちがストレートに伝わる気がしました。音の感じもしっくりしてました。琴の音は、たたみの上に毛氈を敷いて、後ろに金屏風をたてて絹の着物で弾くのが最もいい音がする、といわれていて、私はその環境で弾いたことはないのですが、言われている理想の響きに近い感じなのじゃないかという気がします。また町家で演奏する機会があったらいいな、と実は演奏できるところを探しているので、いいところがあったらぜひご紹介ください。 ──町家の生活の中からいっぱい曲が作れるような気がするんです、と実に楽しそうに話してくれました。 2007.9.1 |