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京町家情報センター
京町家に移り住んで──森田邸

 その昔、千両が辻と呼ばれて、西陣の中でも栄えた一角のすぐ近くにある、町家が軒を連ねている地域に、昨年の5月から住みだした森田さんを訪ねてお話を伺いました。

松井 薫(情報センター事務局長)

――ここにたどりつくまでのいきさつをお聞かせください。
 生まれ育ったのは大阪の桃谷の近くで、家は戦後の建物でしたが、畳の部屋が中心の普通の家でした。学校を卒業して就職で東京へ行き、10年ほど暮らすことになりました。昨年、転勤で京都に来たので、この機会に町家で暮らせないかと思い、探していたら、タイミングよくこの町家に出くわしたのです。
岡田邸
森田邸

――なぜ、マンションなどではなく、町家に住みたいと思われたのですか。
 東京で狭いコンクリートに囲まれたワンルームに暮らしていると、寝るのも食べるのもくつろぐのも同じ部屋で区切りがなく、外との関係も季節とも近隣の人とも隔離されたような気分で、生まれ育った大阪の下町の近所の付き合いや、家のありよう、母の里の石川県の土間があり、あがったところに囲炉裏があって天井が吹き抜けで大きな梁が渡してあるのが見えたりしていたのが思い出されて、もう次に住むならコンクリートの住まいはイヤだと思いました。たまたま京都へ転勤になったので、京都に住むなら、町家に住んでみたい、と思ったのです。

――町家に住んでみて、ご感想は。
 落ち着きますね。それに何か懐かしい感じがしています。確かに外の気候に連動している生活なので厳しい面はありますが、夏はなんとなくやり過ごせますし、冬も寒いのはあたりまえ(朝、ストーブをつける前の気温が3℃なんていうのは、ちょっとびっくりしますが)と思えるようになりました。この家は道路側の建具は昔のままの木製建具なんですけど、他の外部に面するところはアルミサッシになっているので、温まりやすい気がします。生活面ではワンルームと違って、寝るときは2階で布団を敷いて、朝には布団を上げて、と生活にけじめとリズムができます。旅行で行った海外のあちこちの都市や、10年住んでいた東京を見ていると、都会の生活は、世界のどこも同じようなコンクリートの箱での生活です。都会でこういう自然と連動した生活ができるのは、日本では京都しかないように思います。

――ご近所付き合いはいかがですか。
 はじめは、京都の町家に住むのは、近所付き合いの面で少し不安がありましたが、事前に仲介業者さんから説明をしてもらったので助かりました。入居してしばらくした時期に地蔵盆がありましたが、お手伝いをしました。行事に参加すると、顔がわかるし、何をしている人かとかもわかってもらえて、そのあとは近所の方と気軽に挨拶ができるようになりました。生活をしていると、どうしても小さな迷惑をかけてしまうこともあるので、気軽に声をかけられたりするのは大切なことだと思ってます。初めの頃は、こういった近所付き合いも含めて、いろいろおもしろいと思ってましたが、最近はそれがだんだん当たり前の日常になってきています。

――くつろぐ部屋には42インチの大画面のTVとサラウンドの音響設備があって、「これで映画を見たりしてるんですよ」との話。優雅な空間を楽しまれていました。

2008.3.1