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京町家情報センター
京町家に移り住んで──浅野邸

 今回も、楽町楽家が縁で、町家に住みたい、と探された方の話です。今回話を聞いた浅野さんご夫妻は「初雪・ポッケ」の名前で、昨年の「ひらめい展」に応募され、町家ぎゃらりー山田での作品の展示が大変好評だったお二人です。

松井 薫(情報センター事務局長)

――以前はどんなところにお住まいだったのですか。
 普通のアパートに住んでいました。但し、そこに住む前は、JR二条駅の近くの長屋の1軒に10年近く間借りして住んでいました。その頃から、自分たちの作るもの(木工や金工の小さな細工物)が町家の空間に合っているなと感じていました。そこを大家さん側の事情で出て行くことになり、彼女の住まいの近くのアパートを借りていました。そのときにたまたま「ひらめい展」という町家ギャラリーでのアート展を一般公募しているのを知り、応募したというわけです。

――「ひらめい展」に参加されて、いかがでしたか。


昨年のひらめい展 初雪・ポッケの作品
 応募するときにいくつかの町家ギャラリーを見て回って、空間のすばらしさと、細部に込められた職人さんたちの気持ちを感じて、自分たちが作るものがこれらのバランスを壊すものではいけないし、さりげなく置かれていて、でもちゃんと主張しているものを作ろうと思い、応募しました。実際に作って展示する時も、新しく金具や釘をつけるのではなく、すでにある梁の表面の穴を利用して取り付けたりしました。ひらめい展を通じて、町家がさらに深く自分たちの中に入ってきた気がします。

――そのあと、町家を探されたのですね。
 はい、結婚することになりまして、町家に住みたいと思い、探しました。ちょうど、楽町楽家で「住みたい町家を探しに行こう」というオープンハウスの企画もあり、両親も一緒にいろいろ見て回ったりしました。いろいろな町家が見られて楽しかったのですが、なかなか条件に合うようなのがなくて、時間的な制約もあり、結局は町家をあきらめて、戦後の建物ですが、現在住んでいる家に決めました。今の家はコンクリートの土間ですが作業するには適したスペースがあり、少し直しただけで住んでいます。

――その後、町家とのかかわりは?
 今年の楽町楽家でも、ギャラリーりこさんの吹き抜けの大きい土間で糸鋸でつくるアクセサリーのワークショップをさせていただきました。町家の空間で制作する体験は、参加された方もいろいろお感じになったでしょうが、我々にとっても貴重な体験となりました。
 これから先も、こういった町家とのかかわりがあれば、ぜひ参加していきたいと思っております。私たちは残念ながら、町家に住みたいと思って探したのですが、結局住むことはできませんでした。でも、ひらめい展や楽町楽家を通して、町家のよさを残していくことの重要性に気づかされました。今後も京町家ネットの活動に参加できることがあれば参加したい、と思いますし、なによりも京町家ネットを通じて多くの同じ思いをもった人と知り合えたのが、貴重なことだったと感じています。

――一度は町家に住みたいと思って探したけれど、さまざまな事情で町家には住んでいない方も多いですが、今回の浅野さんたちの話をお聞きしていると、町家には住んでいないけれど、町家に対する思いは我々と全く同じだなあ(あるいは住んでない分、我々よりも強いかもしれない)、とつくづく感じました。

2008.7.1