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京町家情報センター
京町家に移り住んで──S邸

 場所は東山区。清水道から西へ入った路地の中。京都に来られて1年半になる、児童書の専門店で店長をされている、素敵な女性のS様をお訪ねいたしました。

足立正之(京町家情報センター)

――京都に来られたきっかけは何だったのですか。
 実家がある三重県の四日市の児童書専門店に勤めていたのですが、新しく京都にお店を出すことになりまして、その担当として転勤になったのがきっかけです。

――なぜ、京町家だったのでしょう。
 実は私の実家も、築80年を越える長屋の町家だったんです。好きというよりは、それが私にとって普通でした。逆にサッシの家とかのほうがなじみが無くって、友人が住んでいるマンションに遊びに行っても、何か落ち着かなくって……。だから京都に越すことが決まって、京町家を探そうとしたことは、私にとってはごく自然なことでした。

S邸
S邸

――清水道の京町家と、四日市の町家と違いはありますか?
 実は、ほぼ一緒なんです。多分建てられた年代が近いのだと思います。この京町家は、四日市の家を少しコンパクトにした感じのおうちだったので、引越ししたあとに遊びに来た友達とかは「何も変わってない(笑)」といわれるぐらい、雰囲気が似ているんです。

――1年半お住まいになられて、良かったところ悪かったところは有りますか。

 良かったところは、とにかく落ち着くところです。仕事で急に京都に来ることになって、あまり家を探す時間も無かったのですが、京都での仕事が長くなることは解っていたので、仮住まい的にはしたくないし、やっぱり住まいをきっちりしないと仕事も落ち着いてしっかりできないと思いました。それでマンションなら沢山物件はあると聞いていたのですが、時間の許す範囲で町家を探したわけです。自分の精神的な面も含めてやっぱりよかったと思っています。
 悪かったところは、正直あまり無いんです。例えば段差が高いとか、また隙間風は入ってくるとかは、生まれ育った四日市の家もそうだったので、こんなもんやと思っています。

――今回はお一人暮らしをスタートされたのですが、町家での女性の一人暮らしというのはいかがですか。
 コンパクトといっても一人で暮らすには大きいので、部屋数も十分あるし、もったいないとも思うのですが、住んでみてわかるのは、ご近所とのお付き合いが思っていた以上にすごくあって、行き来が多いんです。実は先週結婚したんですけど(今は夫と猫2匹の家族です)、一人だった頃は、近所の方がすごく気に掛けていただいて、おかずをもってきてくれたり、私ももっていったりとか、そういう行き来が自然とある感じで、一人暮らしでも安心感がありました。

――京都に住まれて、京都の町や町家について思われることは。
 四日市のほうも古い家は沢山あるんですが、どんどん新しくなっていきます。よっぽど持ち主の方が意識があれば別ですが、取り壊して更地にして、新しく建てるというのが自然というか、当たり前になっています。
 京都はやはり、古い家を大事に住まれているという感じが強いです。それが特別でなく、普通にということがすごく良いなと思います。

――最初はお一人住まいだった京町家が、今はお二人+猫二匹の家族でのお住まいに……。良き物を大切にされる方には、良きご縁があるのですね。
 この京町家とS様のお話は、新潮社の「あの人の食器棚」(伊藤まさこ著)でも紹介されています。

2009.5.1