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京町家情報センター
京町家に移り住んで──Y邸

 楽町楽家への参加をきっかけに、路地の住人になったYさん。住みだして1年あまりになり、最近は知人と2人でシェアして住んでいるとのことなので、お話を伺いに行ってきました。
〈聞き手:松井 薫(情報センター事務局)〉

――京都へ向かったはじめの一歩は何だったのですか。
 それまで地元の群馬や東京で、グループ展をやっていたのですが、今考えると無謀にも、京都で個展をすることになり、これが京都へのはじめの一歩になりました。その個展に来てくれた人を通して楽町楽家のひらめい展につながりました。その頃はまだ、京都に住むことになるとは思っても見ませんでした。実はずっと京都は片隅にはあったのですが、行けるはずもない、と思っていました。が、ひらめい展をきっかけに、人の輪がどんどん広がり、いろいろなことが、京都へ、京都へとつながっていきました。気がついたら町家に住んでいる、という感じです。

――丸1年過ごしてみて、町家はいかがですか。
 そうですね、やっと家になじんできたという感じです。最近、大家さんの了解をもらって、庭にあった木をほとんど切ってしまいました。ここは日当たりがよくて、借りた当初、庭はジャングルみたいな様子で、せっかくの日当たりも家の中まで入ってこない状態でしたから、枝を切ったりしてかなり整理したのですが、それでも毛虫には閉口しました。今回、思い切って古い木をほとんど切ったので、随分すっきりしました。これからどのように庭を作っていこうかと、楽しみです。家自体は昨夏の暑かった時でも、エアコンはほとんど使わずに過ごせましたし、冬の寒さも慣れてくれば気になりません。床が少し傾いているのが時々気になりますが、それ以外は快適に過ごしています。


Y邸
――お二人でシェアしてのお住まいと聞いていますが。
 はい、知人のFさんとシェアしています。たまたまこの町家が、玄関から直接2階へ上がれる階段が余分についていたので、彼女が2階、私が1階という使い方で、台所、風呂、トイレ、玄関は共通です。始めの1ヶ月ぐらいは、いろいろ話し合いました。共通に使う部分も、Fさんのほうが早起きで、時間が適当にずれているので問題はありません。今はたまに一緒に食事をしたり、話をしたりするくらいで、いい距離感で生活できてます。シェアしていていいところは、2階にFさんがいる気配があって、一人ではないんだ、という安心感があることです。

――ご近所との付き合いはいかがですか。
 ここは路地の中ですので、数家族が固まって生活している感じがあって、古い人は50年以上も住まわれています。その中に新しい私たちが入って行ってうまく生活できるのか、気になったのですが、幸い、一人の方が指南役のような感じで、いろいろと気にかけてくれていますので、助けられています。いろいろ話しかけてくれたり、夕飯に誘ってくれたりしますし、ここは注意せんとあかんよ、ということも言ってくれます。この前の地蔵盆のときも、少しだけですけれどお手伝いさせてもらいました。また、大家さんもいつも気にしてくれています。既にできているご近所の世界にはあまり入り込まないで、何かあればお聞きしたりというお付き合いですが、ご近所に自分たちのことをちゃんと知ってもらっているというのは、とても安心できます。1年たって、家の中も落ち着きましたし、気になっていた庭もこれから作りなおせるし、まわりの人との関係もなじんできたので、どんどん住みやすくなってきたという感じです。

ーー1つの町家をシェアするのは、いろいろ問題があるものですが、ご近所の付き合いも共に上手にお暮らしのようです。都会の匿名性の中の生活に、安心感を持つ人もいるといわれますが、人間、どこに住んでも人とのかかわりの中で生活しているので、結局は周りといい関係を保ちながらいることが、安心で快適な生活につながっていくのでしょう。
2011.3.1