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京町家情報センター
京町家に移り住んで──atelier grandp

 西陣小学校の南。京町家をそのまま使用して、注文靴と手製靴教室をされながら町家住まいをされている、atelier grandpaの矢田敦己さんにお話をお聞きしました。
〈聞き手:足立正之 (株)テナントプロデュース〉


atelier grandpa
──なぜ、京町家で始めようと思われたのですか
 東京で会社勤めをしておりましたが、独立するときは、学生時代を過ごした京都で独立したいと以前から思っておりました。京都は職人さんが多く、物作りが盛んであり、また京町家はその物作りを支えてきた建物だからです。また、職住一致の生活をしたかったので、アトリエ部分の必要な広さを考えても、京町家がベストだったんです。

──引っ越される前はどのようなお住まいだったのですか
 東京では普通の鉄筋コンクリートのマンションでした。とても狭く、ミシンや作業台がベッドの横にあるような感じでしたが、効率的で住みやすさは申し分ありませんでした。昨年からこの京町家に住み始めましたが、昨年夏の猛暑、今年冬の寒さとか、気候については季節がそのまま感じられ(笑)、厳しい時期もありましたが、自分が仕事をし生活をする中で、古くて広い、木造のこの空間は、本当に心が落ち着く空間で、大変気に入っています。

──お仕事と京町家の関係は
 仕事は、靴作りと手縫い靴の教室をしております。靴作りは木型から全て手づくりする一からの物作りなのですが、この町家の空間も同じく大工職人さんが一から手作りされた空間で、その中で作業をすることは共通する雰囲気ですので、とても心地いい感じがします。また、手縫い靴の教室は、一回3時間ぐらいの長い授業なのですが、生徒さんも落ち着いて作業ができると、とても喜んでいただいています。

──家主様、ご近所とのおつきあいは
 お隣が家主様なのですが、ゴミ出し等の近隣のことや建物のことで、色々と教えていただきました。また、町内の防災訓練にも参加させていただきまして、ご年配の方が多い町内ですが、良くしていただいています。靴を作る工程で音がでる作業がどうしてもあるのですが、それは、その作業をする時間を考えています。やはり、近隣さんへの気遣いは必要だと思います。

──職住一致と京町家について
 もともと職住一致で物件を探したのは、家賃の面での節約と、通勤ロスをなくするためでした。この町家は、2階建てで、ある程度広さがあるので、1階をアトリエ、2階を住居部分と分けて使っております。職住がしっかりと分けられているのは、有る程度の広さが確保できる町家ならではだと思います。仕事をしていく上で、プライベートと仕事の区別ができないと、デメリットのほうが多くなってしまいます。東京で住んでいたようなマンションでは今の町家のような職住一致は不可能だったと思います。

──今後の展開について
 京町家で起業して1年が経ちました。靴も教室も、口コミで少しずつですが、お客様、生徒さんも増えていっております。長く続いてきた町家でのアトリエですので、私もその歴史といっしょに、末永くじっくりと靴作りを続けることを目指したいと思っています。

2011.5.1