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京町家情報センター
京町家に移り住んで──井上邸

 京町家ネットでもホームページ更新などでお世話になっている井上さん。京町家に住まれて半年が経ち、町家での生活にも慣れてこられて色々なことが変わってきた様子です。他の若いご夫婦にも提案したいような丁寧でシンプルに暮らされているお宅にお話しを伺いに行ってきました。
〈聞き手:城 幸央〉


──京町家に住むことになったいきさつをお聞かせ下さい
  大学の卒業研究で京都のシンプルなデザインの建築・工芸について調べる機会があり、町家を見て回りました。町家の余白や直線を感じる空間がとても印象的で、町家に対する憧れを持ったことを覚えています。大学で出会い、町家も一緒に見て回った妻と結婚し、数年はマンションに暮らしていたのですが、ある日、妻が「町家に住みたい」と言い始め、町家を探し始めました。妻も町家のあたたかさや落ち着く感じが印象に残っていたのでしょう。町家を探し始めて半年はなかなか良い物件が見つからなかったのですが、偶然知り合いの紹介でこの町家に出会ったんです。2人で暮らすのにちょうどいい大きさだと思い、この町家に決めました。

──改修をされた部分についてお聞かせ下さい
 最初はだいどこの火袋も天井が張ってあり、表の間も土間になっていましたが、町家本来の形に戻す改修を施し、火袋をとり天窓をつけ、表の間も土間から板間にしました。2階は吹き抜けで梁の見える空間にしています。冬の寒い時期に、自分たちで柱や梁のべんがら塗りを行いましたが、自分の住む家について深く理解できたと共に塗り進めていくうちにこの家に愛着が沸いてきましたね。これから、庭を造る予定です。知り合いに紹介して頂いた庭師の卵の子と、何を植えるか、どんな燈篭を置くかなど色々と考えながら、緑の色付きや季節を感じられる庭を造りたいと思っています。

──実際に住まれてみていかがですか
 夏はとても暮らしやすいです。風が通るし、湿度がちょうどいいのを感じます。冬はやはり寒いですが、火鉢が活躍してくれました。もう火鉢の扱いにも慣れましたし、火のお世話をしているのが楽しいんです。その他にも、テレビもあまり見なくなったし、マンションではテレビの音がないと寂しい感じでしたが、町家で暮らすとテレビの音などあまりいらないような気もします。光の変化も感じるし、雨が降ることにも気が行く。色々な感覚が変わってきたように感じます。
 それから、町家に住み始めて、生活がアクティブになりました。元々、人が集まる家にしたかったのもあるのですが、ここへ住み出してからの週末の3分の2は誰かが泊まっています。いつも友人が来て、賑やかにしていますし、町家での新たな繋がりもたくさんできました。町内の人との関わりについても、コミュニティーを作る存在の一員として認められていることを感じます。マンション暮らしではなかなかなかった挨拶も交わしますし、先日の祇園祭では家のすぐ近くを御輿や馬が通る時間を教えてくれたり、仲良くさせて頂いています。町内運動会では、「走ってくれる若い人が来た」と期待されています。次回初めて参加するので、期待にお応えできるか不安もありますが、頑張って走ろうと思います。
 今後も町家に暮らしながら、町家に関わり、より多くの町家が残るよう、お手伝いしていけたらと思っています。

2011.9.1