• 京町家net ホーム
  • サイトマップ
  • アクセス・お問い合わせ
京町家情報センター
京町家に移り住んで──西陣の小宿「紫月」


 竹小舞編みや土壁塗りなどご自分も参加されて改修されたお宅。多くの方に京町家を体験していただきたいとゲストハウスをされています。お話をお伺いしてきました。
聞き手:京町家情報センター事務局 城幸央


――京町家に移り住まれたいきさつをお教えください。
 2008年頃、TVで京町家の改修の番組を見ました。その2年ほど前まで長い間海外に住んでいたこともあり、日本の文化に興味津々で、「京町家」というかっこいいものがある!とその時から町家にはまっていったのだと思います。その後いろいろと町家に関する情報を収集し、京町家情報センターに会員登録。そして、週末には大阪から京都に通って、住みたい町家を探す生活が始まりました。もともと京都が大好きでお寺や神社巡りをするためによく京都を訪れていましたが、そのあこがれの土地に、しかも町家に住めるかもしれないと、わくわくしていました。その結果、三条会商店街のすぐ近くの賃貸物件で町家生活が始まりました。
 その後、本来の目的であった自分の町家探しを始め、たくさんの町家を見てまわり、約2年半後に今の町家と出会いました。

――改修にも少し参加されたそうですが、いかがでしたか。
 一番の目的は町家の再生ですので、改修は伝統工法で行い、使えるものはそのまま残すようにしました。自分で作業をしたのは、主に家の内壁の再生作業と木材の塗装です。伝統工法の壁とは「竹小舞」という竹を組んで壁の骨組みを作り、その上に土壁を塗っていく方法です。「竹小舞」は竹を格子状に組み、クロスした部分の竹を縄で編んで作ります。平日の夜は一人でもくもくと作業し、土日になると友達にお手伝いをお願いし、みんなでにぎやかに作業をするという日々が続きました。編んでも編んでも終わらない、そんな日々でした(笑)。そして、その骨組みに粗土をのせて土壁の土台を作ります。土壁塗りで一番たいへんなのは、土、藁、水を混ぜて土を作る作業。粗土は粘土状の土なので、重くて体力が必要です。この作業の後、中塗り用の細かい土を塗って見た目を整えていきます。この後、第三工程として上塗りを行うのが通常ですが、自然な壁で仕上げることと、時間と体力の節約のために上塗りはなしで中塗り仕上げとしました。他には、一部漆喰を塗って仕上げた壁もあります。
 町家の改修に自分自身が参加することができて本当によかったと思っています。その当時は大変なことが多かったものの、みんなで楽しく作業をしたことはいい思い出ですし、なによりも自分の家が職人さんたちの手によって改修されていくのを日々見ながら作業が出来るのが楽しかったです。

――ゲストハウスについてお聞かせください。
 町家を活用して、できるだけたくさんの方に「日本の家の良さ」、日本家屋での「ちょっと昔の日本の生活の良さ」を体験していただきたいという想いから「紫月」をオープンしました。現代の生活では、西洋の文化に支配されすぎて日本の伝統文化が消えていったり、便利さだけを追求しすぎて環境が破壊されたりしています。本来の日本文化や日本の生活というのはシンプルで環境にやさしく、情緒あふれるものだったような気がします。そんな感覚を体感していただき「日本好きの日本人」が増えるといいなと考えています。そしてそういったことも、日本のいいものがたくさん残っている京都だからこそできるのかもしれないですね。お客さんは日本の各地、そして海外からもお越しいただいています。ゲストハウスをしていて一番楽しいのは来られた方にのんびり過ごしていただき、そして元気に帰っていただく姿を見ること。幸い、この西陣界隈はひと昔前の日本の風情が残っていて、タイムスリップしたようなレトロさを味わうことができ、そのおかげでのんびり過ごしていただけているようです。
 町家探し、町家の改修などでわたしの経験を活かして何かのお役に立てたら幸いです。何かありましたら紫月のWEBサイトを通じてご連絡いただけたらと思います。それから、町家や京都の情報をFacebook「京都町家サークル」にて共用し、より多くの「町家好き」を広げていけたらと思っています。

 西陣の小宿「紫月」
 http://www.shizuki-kyoto.com/
 080-2435-5125
2014.3.1