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京町家情報センター
京町家に移り住んで──綾邸

高瀬川・四季AIR1階
四条河原町から徒歩7分、高瀬川ほとりの築80年の小さな京町家・・・・木造の良さを残しながら大胆にリノベーションした画廊は おおきな窓から桜の枝が手に届き、川面を遊ぶ鴨やサギなども間近で眺められる素晴らしいロケーション。画廊&サロンとしてオープンされ2年目の春を迎えられたオーナーの前川八洲男さまにお話を伺いました。
聞き手 若山不動産 代表 若山喜正


――町家で画廊を始めようと思われたきっかけは
 落ち着いた風情の下木屋町と高瀬川沿いの桜がみごとに調和して、桜花爛漫の頃にこの町家で花見を楽しめたら素敵だなと思いました。個人の住まいではなく、画廊プラス気楽に集まれるサロンにすれば、高瀬川の花鳥風月をより多くの方々と五感で共感できるのではないかと決断しました。
 在職中、日本画家・鈴木靖将「万葉展」をパリ・ユネスコ本部で開催したこと、大阪国際会議場の開場記念として日仏のアーティスト100人が作品を競う「日仏アートマルシェ」を3年間運営した経験等から「アート作品は鑑賞する側にも新しい発想や行動を触発する力がある」と感じました。
 自分が感動した作品をより多くの方々に触れてもらいたいと思ったことも画廊を始めた動機のひとつです。また人との出会いや異ジャンル交流が大好きで、単なる画廊にとどまらない空間をつくりたいと思っています。

――京都には画廊はたくさんありますが、「高瀬川・四季AIR」の特色は何でしょうか?
 町家のやわらかな空間と自然光のなかで、アート作品が新しい輝きと魅力を生み出すのは不思議です。川辺や川中も展示の場と考えた陶芸家の川上力三先生は高瀬川に土で染めた布を流すパフォーマンスもされました。高瀬川の自然に癒され、来場者とアーティストが心を開いてゆったり語りあわれる事も多いです。画廊2階に宿泊もできるのでアーティストは経費節減だけでなく、ご家族と京都ホリデーを愉しまれています。

――京町家を改装するときのお話を
 大家さんから好きなように改装してよいとの許諾があり、嬉しくワクワクしました。京町家一軒まるごとリノベーション・・外壁・玄関まわり、キッチン、トイレ、1階和室はフローリング、2階和室は畳、壁含めての全面改装です。完工までの時間と予算が限られおり、リフォーム業者2社に見積を出してもらいました。桜の名所・高瀬川ほとり、京町家の風情を残しながら、川の眺めを楽しめるお洒落な雰囲気のインテリアにすることに業者が応えてくれ、沓脱ぎ石をインテリアとして取り込む等のアイデアにも感謝しています。オープン後、畏友のTさんに竹のテラスを作って頂いたおかげで更に親水性の高い画廊になりました。

――この場所で 画廊をはじめられて、嬉しかったことや予想外だったこと等があれば・・・
 初夏の朝、画廊の窓をあけていたら ゴイサギが窓枠にとまりすっかりなついてくれたこと。8月20日、画廊前の川中で 魚つかみ大会が開かれ地域の子供と大人の楽しい声が響いたこと。フルートコンサートの折には木屋町通を散策中の外国人ご夫妻が飛び込みで参加されたり、学生時代の先輩が初陶芸展をされたり、高瀬川の魅力もあり、マスコミや広告主の諸先輩が画廊を訪ねて下さり旧交を温めたり、新聞記事がきっかけで数十年ぶりに交遊が復活した例もありました。

――展覧会以外にも 様々な楽しい催しがあるそうですね。
 シンガーソングライター真依子さんの定期コンサート、フルートや篠笛の演奏会、ジャズライブも開きました。その道の達人に話を伺う「達人夜話」を折々に開いています。昨年8月の「六道参り企画」では井上満郎先生のご講演「京都の中の地獄」を聴講したり、みんぱく石毛直道先生「東西食談義・蕎麦とうどん」では お話の後に「戸蕎麦打ち名人」の打ち立ての蕎麦や滋賀の地酒を全員で味わい、和気あいあいでした。

――地域との関わりも含め これからの夢は・・・
 3つの京町家画廊が共同で「京都の伝統行事の魅力」を再発掘して同時発信する展覧会を始めました。昨年8月は六道参り「閻魔大王とこわい地獄図絵展」ことし2月は「京のひな祭り展」を開催しました。また昨年9月に開廊記念として「島原太夫の宴」を料亭「田鶴」で開催、たいへんご好評をいただきました。ひとつの画廊の中だけにとどまらず 様々なネットワークをつくりたいと考えています。ことしは京都国際芸術祭、琳派4百年記念事業、2016年は世界考古学会が京都で開催されます。それにあわせアーティストや大学ゼミの協力を得て、地元の方々と一緒に高瀬川と下木屋町の魅力を発信するプロジェクトが発足しました。高瀬川のスケッチ会、ストリートでの展示、歴史懇話会、古い写真収集等を通じその価値を共有したいと思います。また夏期に子供や大人が高瀬川をもっと身近に体感できる親水装置「川中遊び場」をつくろうと模索しています。多くの皆様からご指導やご協力を賜われば嬉しく思います。

――前川様 ありがとうございます。ますます交流の輪が広がる事を願っております。

2015.3.1