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京町家情報センター
京町家に移り住んで──ダイモンナオ邸

京都市上京にお住いのイラストレーターをされております「ダイモンナオ」様宅にインタビューに行きました。
<聞き手:株式会社煢i 煖エ久永>

――町家に住むことになったきっかけ
私は大学時代から結婚して東京に引っ越すまでの約8年間を京都で過ごしました。東京方面に居住していた間もいつかまた京都に戻りたいと考えており、まだ京都に移住する計画もない時から京都の物件情報をよく検索しては見ておりました。新築一軒家からマンション、中古物件まで様々な物件を探していると、たまに町家のリノベーションされた物件が検索に掛かり、そんな選択肢もあるのかとぼんやりとは考えておりました。ただ、「町家なんて高いだろうな」とか「暮らし方が難しそう」と思い、自分には関係ないだろうと感じていました。ようやく5年前に家族で京都に転居することが決まり、本格的に住居探しを始めたのですが、その時点では中古物件を購入・リノベーションして暮らそうということだけは決めての物件探しでした。そして、不動産屋さんにいくつか物件を見せて頂いている間に、町家という選択肢がそれほどハードルの高いものではないのかもしれないと感じるようになってきました。歴史のある古いものを活かして、心地のよい生活ができるのではないかと考えはじめ、そこから町家に限定して家探しを始めたのがきっかけでした。

――町家に住み始めて感じたこと。
 改修工事が始まる前の古い町家の購入を決めるときは正直不安でした。本当にこれが快適に住めるように生まれ変わることができるのだろうかと。しかし、何度も何度も町家の設計士さんと打ち合わせをしているうちに、町家の良さを少しずつ学ぶこともできました。数ヶ月後、改修工事で本当に見違えるほどに素敵な空間に仕上げて頂きました。転居前は、神奈川の新築分譲マンションに暮らしていましたが、便利ではありつつ、何か物足りないと感じておりました。マンションの無機質で密閉された空間に暮らしていた頃と比べて、この町家自体の空気の流れを感じて(隙間風が入ってくるとかそういうことではなく)、いい空間に暮らさせて頂いているなとつくづく思います。春・秋の気候のよいときはもちろんのこと、夏も1階にいると涼しいので、真夏の間は寝る場所を2階の寝室から1階の和室にすることが例年の恒例になっています。冬は2階が暖かいので、寝るときもロフトにあるアトリエも想像していたよりも快適に過ごせています。

――マイナス面は。
 自宅の町家は織屋造という構造で、吹き抜けが大きく取られているので、とても開放感があり気に入っているのですが、冬の温めた空気は全部上に上がってしまいます。家の中で、一番開放感のあるキッチン・ダイニングの空間が冬は他の部屋と比べると、どうしても寒くなってしまうのが欠点でしょうか。そのため、冬は天井の低い部屋である1階の中の間や和室を締め切って、そこにいる時間が長いです。仕切った部屋はストーブなどで部屋がとても暖かくなるので、さほどの問題ではないのですが、冬の間だけは一番のお気に入りの吹き抜けのダイニング空間を活用しきれないのが少し残念なところだと思います。

――5年住んでのまとめ。
 うちの町家は全ての床材を天然の無垢材にしてもらい、クロスも一切使わず漆喰や土壁、もしくは木材で壁も天井も作って頂いたことに、心より感謝しています。自然の素材のものは、湿度の調整や消臭の役目があるとはお聞きしていましたが、本当にそうだなと実感しております。マンションの時のような快適さには欠けると思いますが、木や土の素材感を日々感じながら気持ちよく暮らすことのできる今の町家での生活に満足しております。
 構造的には古いもののよさを活かしつつ、現代人の生活スタイルに合わせて改修しながら住み継ぐことのできる町家という建物をすごいなと思います。また縁があって、ここに住まわせて頂いていることに感謝の気持ちを忘れず、丁寧に暮らしていきたいと思います。

2015.5.1