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京町家情報センター
大型町家の存亡

株式会社 八清 西村孝平 

今回から趣向を変えて、新たにシリーズを始めさせていただきました。京町家情報センターに加入されている不動産屋さんの、京町家関連の皆様に今お伝えしておきたいこと、京町家仲介エピソード・仲介あるある、賃貸売買注意点、活用事例、新しい動きなどをシリーズとしてお伝えしていきます。京町家の流通の面で活躍する不動産屋さんの視点からの面白い話しを聞いていけることと思います。

 国内の主要な都市ランクの特性を経済や文化などの6分野で評価した民間シンクタンクの調査結果が10月3日に発表されました。その全国第1位が京都市でした。特に文化・交流と研究・開発分野が上位にランクされているために総合1位になったのですが、京町家を含む京都の景観はジリジリと悪くなっているように思えます。
 それは昨年発表された京町家の解体の届出制を含む京町家条例の施行が原因かもしれません。条例が発表されてから次々に大型町家の解体が進んでいます。今ブームになっている観光型の宿泊施設の建設は市内のあらゆるところで建設予告の看板が目につきます。
 改装に多額の費用がいる京町家、特に大型町家は消防や建築基準法の規制が重くのしかかっています。それより解体して耐火建築物のホテルにする方がよっぽど経済合理性があります。

 次回2019年「3月8日は町家の日」のイベントにレセプションを予定している中立売通黒門角の役人町町家は弊社が仕入購入した大型京町家です。土地は158坪、建延べ面積108坪もある大型町家です。売主からは思い入れのある町家なので解体しない方に売りたいという意向を受けて入札に参加しましたが、やはり解体して賃貸マンションを予定している購入者には値が合わなくて落札できませんでした。普通ならこれで終わるのですが、仲介業者さんから面白い提案をいただきました。八清さんの価格は他よりも低かったのですが他の方はすべて解体を希望されています。もし、もう少し高く価格を提示していただいたら売り主の一人である依頼者がほかの相続人の方に説得するということです。今までほとんど断り続けられていた大型町家の入札で初めての出来事でした。これに感服した我々は売主さんの希望価格まで這い上がって契約をさせていただいた町家です。
 その後販売にあたって、私どもは何とか売主の意向に沿った買主を探すべくオープンハウスをさせていただきましたが、建物が108坪もありおそらく修復だけで1億近くかかると思われ、オープンハウスの来場者も高額の購入に考え込む方が多い中、大阪で飲食や宿泊施設を経営され京都にも大型町家を所有されている事業者さんが購入していただくことになりました。

 今回の改装は大型でもあり、建築基準法3条の適用除外項目に該当する条例に基づいて改装されており京都市ならではの大型京町家改装物件になります。
 今回の売却はおそらく例外中例外でありほとんど価格で負けてしまって更地になってしまいます。このままでは大型町家はなくなってしまいます。何とか税制優遇か、はたまた建築基準規制緩和か又は有効活用事業者の特典でも付けないとさびしい京都景観になってしまいます。

 京町家条例は京町家を残すために京町家情報センターが中心になって提案された条例ですが、今後条例が進化しなければいけません。第2弾の提案を早く提案してゆくことが今の課題です。