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京町家情報センター
現況報告

報 告◎各地の流通事情 ―第4分科会「町家の利活用と流通」に参加して

井上 信行(京町家情報センター)

 第2回全国町家再生交流会の2日目、午後からは5つの分科会でさまざまな問題について議論・情報の交換がされた。第4分科会は、上七軒のお茶屋の建物を活用した会場で、空き町家と利活用を希望する人との橋渡しをする活動に焦点をあてて話し合われた。
 話し合いに先立って、大井代表の挨拶があり、会場となっているお茶屋の建物について、井上えり子さん(京都女子大学准教授)から解説があった。その後、各地での具体的な活動についての報告があった。


第4分科会のようす
 金沢は、町家の利活用・流通の前提としての保存や改修のために行政の用意した制度的枠組がかなり充実している印象を受けた。周知の伝統的建造物群指定の他、これに至らない小さく旧いものに対する「こまちなみ保存区域指定」、水廻りの改修資金に充てることもできる「リフレッシュ制度」もある。また、改修技術継承のために「金沢職人大学校」があり、さらに利活用・流通支援のため、石川県の宅建協会・建築士会の協力の下、町家物件の情報発信として「かなざわ町家情報バンク」があることは特筆すべきことであろう。
 民間の動きとしては、金沢町家を物件として扱う不動産業者が出てきたことが注目される。また、町家(賃貸)を事務局とした「金沢町家研究会」があり、町家相談会の開催やコミュニティ空間としても利用されている。この研究会は来年NPO法人設立と伺った。他、関連組織として町家流通を担う、LLP(有限責任事業組合)または株式会社形式による「金沢町家」の立ち上げも予定されているという。改修組織「金沢匠の会」とともにネットワークの充実がみられ、我が京町家ネットに比するものになるのではないかと大いに期待している。
 次に、広島県竹原市では「まちなみ再生の特区」が認められている。宅建業の免許を持たなくても不動産情報の紹介ができるという特例措置である。特区は、町並み保存地区(5ヘクタール)を中心とした竹原市本町一帯が対象であり、この制度を利用したNPO法人ネットワーク竹原は、空き家の賃貸情報をチラシやサイトなどで紹介したり、借りた空き家を改修して希望者に転貸したりできるようになった。転貸方式は、(1)修理費転借主負担・退去時の造作等買取請求権放棄(2)転借利用者がある時、その期間のみ所有者への賃料支払いをするというものである。ネットワーク竹原はこの特区制度を活用し、町家再生を通して定住促進・コミュニティ再生を目指す点で注目に値するものである。
 福岡県八女市での取組みは、まず、NPO法人八女町家再生応援団による、町家の売買・賃貸の仲人事業、町家の中庭めぐり等のイベントを通しての町家の魅力発信事業が挙げられる。特徴的なのは、法人の会員が全員、市職員(八女以外の他市町職員も含む)から成っていることで、ある種半官半民的といえる。また、地元有志による活動も活発で、地元有志が特定の町家の保存を目的として保存機構(任意団体)を結成し、町家の所有者から長期管理委託(25〜30年)を受ける。改修は、費用を行政の補助金と有志の出資で賄い、改修後に賃貸に出す。賃料をもって有志の出資返済に充てるというものである。
 一方、新潟では、新潟まち遺産の会の活動がある。利活用の前提としての町屋(新潟では町家といわない)保全のための有形登録文化財申請の手助けや文化財町屋でのイベント事業、まち歩きマップの作成・頒布やまち歩き、講演会の開催など、町屋に限らず、広く「まち遺産」の保存・継承を目的とした活動が行われている。

 こうして、いろいろな地域の取組みをみてくると、結局、都市規模、地域住民や地方行政の町家保存等に対する意識の在り様・深浅、生活文化の相違といったものの組み合せ如何で、「町家の利活用と流通」についての取組みが民間主導型もしくは行政主導型、あるいは官民協働型なのか、といった差異が生じるものと思われる。
 「町家の利活用と流通」についてのスキルは京都が最先端でかつ多様であると自負しているが、それがそのまま他の都市でも適応できるものなのかの検証も必要であり、それによって各地域により適したスキルの発見と構築が叶えられていくのではないだろうか。




事務局覚え書き

オーナー登録数  延87
ユーザー登録数  延704
物件登録数     延708
契約件数      84   
(07年12月10日)

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