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京町家情報センター


(15) LCEを考える
 人にかかわる物が生産され、運ばれ、使われて廃棄されるまでにかかるコスト(費用)は、ライフサイクルコスト(LCC)と呼ばれて、いろいろなものの判断の指標にされることがある。
 しかしコストというのは、人間が社会生活を営むのに作り出したものにすぎない。人間が生存し、社会生活を営んでいるその大本は、自然の世界にある。山や木や土は、私はいくらです、とは言わない。石油や金もそのものがお金をほしがっているわけではない。
 自然界での、コストに相当するのは何だろうか?
 よく分からないが、エネルギーで考えるというのは一つの指標になる。
 木造住宅が作られる場合で考えると、まず骨格を作る材料がどこで生産されてどのように運ばれるのか。遠い外国で重機を使って森を伐採して取れた原木を、タンカーで日本まで運ぶのか、近くの手入れされた山で、継続して木を切り出せる程度の量を切り出して運んでくるのか。作るときの大工さんの手間はどのくらいか。(細かく考えれば大工さんの日々食べる食材が多くのエネルギーが使われたものかどうかも)
 仕上げ材料の生産にかかわるエネルギーはどうなのか。出来上がってから、日常的に使われる生活のためのエネルギーはどれぐらいか、その家そのものがどのぐらいの期間使われるのか、さらに解体廃棄されるときに自然に戻るのか、などなどライフサイクルエネルギー(LCE)で物事を考えないと、バランスの悪い判断になる。
 世間ではエコばやりだけれど、エコロジカルをエコと略すことにより、エコロジカルな考え方とは程遠いものになって、せいぜい目先の同じ機能を発揮するのにエネルギー効率が他よりいい程度のことを、商売のネタにしているにすぎない。
 エネルギー効率のいいエアコンだとか、人が離れるとセーブモードに切り替わる冷蔵庫とか。その制御するのに必要な部分に使われるレアメタルが、実は森を伐採して土を掘り起こさないと手に入らない、なんてことには目をつむって。
 それ以前に、エアコンって必要か?そんな大容量の電気冷蔵庫必要か?必要なだけに絞って、しかも快適で楽しい生活が送れる家を考えねば。
 人の一生は、学び、社会に出て家庭を作り子供を育て、やがて自然の世界に目が向くようになり、さらに合理の世界を突き抜けて非合理の世界に入っていく。家は、そのどの局面にも対応できるように作られるべきなので、これからもそういった家を提案し続けていこうと思っている。

(2011.9.11京都新聞掲載)