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京町家再生研究会
京極迪宏(再生研究会理事・交流会担当)

「第3回全国町家再生交流会」に期待する
 待望の「第3回全国町家再生交流会」がこの10月17(土)、18(日)日に金沢市の金沢市民芸術村を主会場に開催されます。前日の16日(金)には、改修現場の見学会がツアー形式で行われ、その後、交流懇親会が予定されています。今回の主催は地元実行委員会ですが、その中心となっているのは、広範囲でユニークな活動が全国各地から注目されている「NPO法人金澤町家研究会」です。
 開催地金沢市は、京都と同様に第二次世界大戦で空襲を免れたため、歴史的な建物や町並みが他都市と比較して多く残っており、落ち着いた雰囲気の独特の都市景観を形成しています。また、先駆的な「こまちなみ保存地区」制度等の行政施策も手厚く行われており、町並み保存に一定の成果をあげています。しかしながら、金沢もまた経済合理主義による偏った都市開発によって、歴史資産としての町家は京都と同じように年々急速に減少してきました。
 こうした危機的状況を克服するために、広く市民的取組みの必要性が提唱され、平成17年6月に金澤町家研究会が発足しました。川上理事長は同会HPの挨拶の中で、「金澤町家の継承・活用にむけて、市民等相互の意見の疎通を図るとともに、金沢市などの関係機関とも連携を取りながら、金沢市における風格と魅力ある街並み形成の促進および市民主体のまちづくり推進を図る」ことを目的とすると述べておられます。
 全国町家再生交流会は、「町家再生」をテーマに私たち京町家ネットが仲間に呼びかけた全国規模の初めての集まりとして、2005年6月11、12日、京都芸術センターを主会場に開催されました。当初、こうした会合を今後継続して行うことが確定していた訳ではなく、したがって「第1回」という表記はありませんでした。全国からの参加が心配されましたが、大変好意的に評価いただき、82団体、351名が参加しました。この会合の内容については「報告書」に詳しく記されていますが、京町家ネットの10年以上の活動実績を全国の仲間に知ってもらい、活動の輪を広げるという最大の目的は達成されました。
 そして、京都での最初の試みが全国の仲間に受け継がれていくことを期待しましたが、各地の運動がこのような全国大会をまだ開催する段階まで到っておらず、「もう一度京都で頑張ろう」ということになりました。第2回大会は2年半が経過した2007年12月1、2日、寒風のなか北野にある上七軒歌舞練場を主会場に開催され、全国から250名の仲間が集まりました。
 第2回全国町再生交流会の最大の成果は、各地の運動が確実に深化しつつあることが実感され、歴史豊かな中核都市である金沢での第3回交流会開催が決まったことです。そして、町家再生をめぐる状況と課題について、全国に共通するものと、都市規模のスケールに特化したものを明確に区別し、縦・横・斜めのネットワークを一層充実させていかなければならないことが確認されました。更に、「町家ブーム」を背景に、観光振興政策の一環として政府、行政主導で進められている、町家の物販、飲食、宿泊等への安易な商業転用が、歪んだ町家再生・活用をもたらす危惧を表明しました。
 第2回交流会から更に2年が経過し、投資バブルに翻弄された結果の金融危機がもたらした世界同時経済大不況や、政権交代が現実のものになるという社会状況の下で、いよいよ第3回全国町家再生交流会が金沢で開催されます。今回のテーマは『町家の再生活用と流通促進に向けて 誰が何をすべきか』です。そして、第2回に引き続き、各都市の活動事例を比較することによって、共通する解決策と都市規模による解決策を明らかにすることを目指しています。
 更に、町家に関わる利害関係者ごとの課題や解決策、支援策などを議論し、一般論ではなく現状の克服に有効な具体論を導き出したいとして、分科会テーマに次の5つの具体的課題をあげています。

(1) 町家住まい手に対してどのようにアプローチするか
(2) 空き町家所有者にどのようにアプローチするか
(3) 不動産業者との連携のあり方について
(4) 町家住まいを希望している人は何を必要としているか
(5) 技術者と町家修復・再生の仕事のマッチングのために何が必要か

   私たち京町家ネットでは、4会がそれぞれ独自に活動をしながら、有機的に連携して更なる京町家再生・活用を軸とした市民活動の深化を目指していますが、町家再生の具体的活動方法を中心に協議する第3回交流会に積極的に参加し、有意義な議論の輪に加わりたいと思います。全国の仲間との多様で新たな具体論の協議の中から、私たちのこれまでの活動を振り返って総点検し、新たな知恵を獲得して次の活動に有効に活かしていきたいものです。活発な交流に大いに期待し、成功を祈ります。

2009.9.1