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京町家再生研究会
京町家再生研究会 活動報告

公開シンポジウム2018 京町家新条例の適切な運用を考える
  −町家をこれ以上壊さないために(続)

前号ではパネラーの骨子を紹介いたしましたが、今回は後半、パネルディスカッションの論点を紹介いたします。

◇地域と地区指定

 京町家は地域で守っていけるようにする。
  地域ごとに判断できる仕組みをしっかり作る必要がある。行政としてある範囲を定める、地域で決める領域を定める、という制御の方法にして、地域に情報を送って、地域で議論する。地域のまちづくり支援をもっとやっていけば、町家の保全や継承をうまくスムーズにやっていくことができる。  
 住んでいる人の力を高めて行く施策を行政として検討してほしい。教育的なアプローチも事業の中で取り込んでいけるように。

◇所有者を支える

 京都市の借り上げも考えたい。「知らない人に貸したくない」という所有者の思いが結構大きい。オーナーに対して間 に入ってある種の信用力を得て、次の借り手を見出していく、その間に改修できるようなシステムをつくっていきたい。
 この25 年間に家族の力が弱まった。4 割が一人暮らしで、自分の力も高齢化で弱まっている。自分の家のことを家族で 考えられない状況で、コミュニティの弱体にもつながっている。介護も含めて家族を支えることを考えないといけない。

◇京都の総力で

 町家には一つの社会がつまっている。教育や医療も関係している。京都市がこれらの複雑な問題を解くために都市計画局だけではなく、横に並んだ京都市のメンバーが、さまざまな問題にも対処できるように、相談者を包み込んでいくような相談の仕方を望んでいる。
 多様なスタッフが今回の条例をうまく進めるために必要となる。「京都市が縦割り」と揶揄されるのではなく、都市計画局がさまざまな関係部署に声をかけて、京都の総力戦になればよい。

◇京都離れ

 京都で買おうと思っても「高くてもう無理」という人もおり、町家をほしいお客さんが大津の物件でいいというような状況になってきた。ますます京都離れが起きるのではないか。

◇市場のコントロール

 都市計画の道具として使える規制策、誘導策として、技術的制御でまちをよくしていくことをこれまで一生懸命考えてきたが、これは一つの方法に過ぎない。経済的制御をうまく行うことも重要である。まず、市場メカニズムがちゃんと機能していくような環境整備が必要となる。現在の不動産市場の問題は、土地市場だけで床市場が十分整っていないこと。壊して住宅になるならば壊さなくても良いという考えを共有しなければならない。十分活用できる市場が本来はあるのに、議論できていない。さらに、まちづくりの視点から税制などの有効な活用方策が検討されるべきである。
 文化の継承のためには居住機能の維持が必要である。居住がゼロになるとそもそも「壊さないで」と言っている意味がなくなり、もっと深刻な問題になる。まちには一定の居住機能が必要で、この点からの市場への公共介入は必要である。

◇中身の問題

 オリンピックも観光戦略も京都で起きていることとはなんの関係もない。問題は、「何千万人来た」とか、数の法則で物事が決まっていることである。たとえば、お正月に門松を飾るところがほとんどない。そういうのがあると「中身を伴った深みのあるまち」と見る人々は感じる。どこにもあるような生活文化であれば、どこでもいい話になってしまう。京都に来てもらった人に深いところまで親しんでもらうためには、中身の密度を高めていかなければならない。
 何が本質的なことなのか、見極めることが必要。京都がまちでなくなることは大変、という意識をみんなで持ちましょう。

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町家が壊され、ホテル建設現場となっていきます。


<丹羽結花(京町家再生研究会)>

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