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京町家再生研究会
宗田 好史(再生研究会理事)

インターネット上の京町家ネット
 会員の皆さんは京町家ネットのホームページ(HP)をご覧になったことがあるだろうか。京町家再生研究会のHPが公開されて10年、ネットの「ホームページ委員会」の皆さんのご努力で、毎年のように充実を重ね、特色ある4組織が個性を競っている。趣味の領域を超え、社会性も文化性も高く、皆さんの京町家への思いが籠った内容になっている。

 総務省「2008年度版情報通信白書」は、2007年末のインターネット利用者は8,811万人、全人口の69%になる。伸び率は2003年以降鈍化したが、パソコンでなく携帯電話やゲーム機など新しい端末からのアクセスが増えた。NTTやKDDIに加え、関西電力等が光通信を進めた影響が大きい。また、2004年以降は50歳以上の伸び率が著しいという。インフラの整備で田舎の壮年層に普及し、パソコンや携帯電話の操作が簡単になったことが大きな要因である。ネットで京町家を見ている人は実に多い。検索エンジン、Google、Yahoo!、MSN、Biglobe等、どれで「京町家」を探してもまず「京町家ネット」が冒頭に出る。
 京町家ネットのHPはデザインが凝っている。楽町楽家のポスターでお馴染みの野呂聡子さんの手になるという、最初のページ右上の「サイトマップ」をクリックすると、京都の通りや小路に准(なぞら)えて、多様な内容が東西南北に配置されている。下京界隈の「相談通り」と「友の会」「職人お出入り通り」が交差する辺りに「町家の本屋さん」と「京町家文庫蔵」が建つ。それぞれ京町家ネットの出版物と会報連載記事のバックナンバーが揃えられている。京町家ネットらしい丁寧な造りで、短いとはいえ15年余の歴史が感じられる。

 窓際会員である私は「文庫蔵」にはけっこう詳しい。ところが、賑やかな繁華街の「友の会」界隈には疎い。たまに迷い込んだ日には「いけずのひとりごと」に足を取られ、また今朝は「町家のウィンドウ」を発見、初めて眺めたりしている。
 皆さんはお読みだろうか、友の会には会員各氏によるエッセー集「暮らしの歳時記」の他、松村篤之介会長の「ちょっとお話ししておきたいこと」や山田公子さんの「京の菓子暦」がページを重ねてきた。一方、「作事組コラム」には、左官の佐藤嘉一郎、大工の堀内健、瓦の光本大助、電気工事の堀宏道各氏のエッセーが、同じく作事組の「京町家の技術」には大工の荒木正亘、表具師の若林荘造各氏らの名文は読み応えがある。情報センターでは事務局長松井薫氏の「京町家に移り住んで」、「おそうじ隊出現」で活動の原点を再確認し、同氏が各地で描いた「町家スケッチブック」も楽しい。また、「作事組の技・動画集」には、柿渋や「おくどさん」、虫籠窓、揚げ前の仕事の様子がビデオで紹介されてもいる。
 京町家ネットHPだけでも見通すのに丸一日はかかる。そのはずで、作事組動画集だけでも30分はある。読み通せば、ちょっとした通になることは請け合い。これも京町家ネットの仲間、西村孝平氏の八清が一昨年から同社のHPで始めた「京町家検定」も話題になった。他の情報センター登録不動産業者のHPにも数多くの町家情報が紹介されている。
 サイトでは鴨東に追いやられた再生研も「京町家は今」「論考」「再生の試み」で頑張るが、京町家ネットの活動領域は再生研を遥かに超え、住み手の方に、また作り手の方に広く、そして深く広がっている。長年の活動で、京町家の美しい姿や作事組の伝統の技と工夫を会員の皆さんに紹介した機会は多かった。しかし、参加できなかった皆さんに是非見て頂きたい内容が積み重なり、京町家ネットは幅広く豊かな人材を得て、知らない間に内容の濃いHPになってきた。最近の改修事例や日々の活動を知らせるための情報手段だけではない。京町家のエンサイクロペディアとして充実した。某新聞社作HP「京町家資料館」よりも、当然ながらずっと充実している。言うまでもない、京町家ネットに集う皆さん方一人一人の思いが積み重なって、インターネット上に京町家の世界が出来上がった。この世界は、決して過去への追憶だけではない。むしろ今日の町家を、そして未来を町家の姿を示している。現実の京都の街よりも一足早く、京町家が再生し、京都人の豊かな暮らしが広がっている。日本中が羨む風格のある町家の町並みが見えてきた。

2008.9.1