![]() ![]() ※「京の菓子暦」は、平成14年(〜15年)の取材記事です。
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一年間の取材を終え、改めて、和菓子は京都人の毎日の暮らしに密接に結びつき、生活と心を豊かにしてくれていることを実感し、毎月のお菓子を紹介しながら、その奥にある京都の知恵と文化を少しは探れたかなと自負しています。 毎月お忙しい中を本当にご親切に、そしてご丁寧にお話してくださいました「大極殿本舗」の芝田様と、ご協力いただいたお店の方々に、この場を借りまして心より御礼申し上げます。 山田 公子
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![]() ◆「みな月」 六月を「みな月」といいますが、旧暦の「水無月」というのは、新暦でいうと七月ごろにあたります。梅雨の最中の水が豊富な時季に何故「水無月」なのか?というのは、新暦で考えた場合に出てくる疑問です。旧暦だと真夏の日照りで地割れが生じるほどの気候のころで、諸説はありますが、暑さで水が涸れるミズナシの月とし、水無月の字を当てたといわれることが多いようです。 ところで、京都では毎年六月三十日は、「みな月」を食べる日です。 一年を二期に分けた陰暦の六月と十二月の晦日(みそか)は、半期の最後の日ですので、新たな期を迎えるにあたっての「大祓(おおばらえ)」の神事が宮中を始め各神社で営まれるのですが、六月三十日のそれは一般的に「夏越の祓い」あるいは「水無月の祓い」と呼ばれます。悪病退散・心身浄化を願う「茅の輪(ちのわ)くぐり」は、まず「水無月の 夏越の祓する人は 千歳(ちとせ)の命 延ぶというなり」と唱えて茅の輪をくぐります。 また、土用の頃には「氷室(ひむろ)」開きを行い、天然の氷を宮中に運んで、暑気払いにその氷片を口にされたと伝えられています。庶民は、当時貴重な氷を手に入れることなどできませんので、氷に見立てた御菓子を食べるようになったようです。以来、京都では、この日に氷片を型取った三角の「外郎(ういろう)」にマメになるようにと小豆を散らした「みな月」を食して、うっとうしい梅雨と別れ、祇園祭を迎える慣わしとなりました。
今回は、実際に京都の人がそれらをいただく六月三十日まで、写真はお預けということにして、本来の「みな月」を食べる日に載せたいと思います。どうぞお楽しみに。 |
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◆初夏の御菓子 この季節の生菓子は、見た目に爽やかで、みずみずしさを感じます。
おなじみの「きんとん」にも、初夏らしい美しさが加わります。
見た目にも涼しげで、透明感のある美味しさが楽しめます。
◆小麦饅頭
小麦は「年越草(としこしぐさ)」とか「去年草(こぞぐさ)」とも呼ばれ、古代から食用に用いられていたようです。旧暦の七月七日にお供えした「麦縄(むぎなわ)」というお菓子は、いわゆる「オコリ除け」に用いられたようです。小麦粉の種類には、強力・中力・薄力・超薄力とあり、冬小麦と夏小麦、また赤小麦と白小麦とがあって、用途によって使い分けられます。カステラなどに使う場合は、グルテンが邪魔なので、超薄力粉を半年ほど寝かせてから使います。粉は寝かすほど粘りがなくなり、軽くて浮きが良くなります。逆に麩饅頭の場合は、強力粉を用います。グルテンの固まりで生麩ができ、それを焼いたものが麩菓子になります。 蒸し饅頭には、「薬饅頭」といって炭酸などの膨らし粉を入れて作るものと、麹(こうじ)を入れて発酵させ膨らませるものがあります。前者はお火焚き饅頭や薄皮饅頭などで、後者は酒饅頭などです。 焼き饅頭というのは、どら焼きや三笠(みかさ)、「調布」、「鮎」、「花背」などですが、カステラやボーロ、栗饅頭や、卵を入れないで作る松風などもあります。焼き方や、膨張剤になる卵や膨らし粉の使い方によって、いろいろなお菓子が出来上がります。 また、和菓子でよく用いられる「こなし」は小麦粉と餡で作ったもので、「ねりきり」は小麦粉と餡とぎゅうひで作られたものです。「ぎゅうひ」は餅粉と砂糖を合わせたもので、それが入った「ねりきり」の方が「こなし」よりも、くっきりとした形が作りやすいのですが、京都では、ほんわりとした「こなし」の方を好む傾向があるようです。 ◆「饅頭」について 1341年に元(げん)から帰化した林浄因が小麦粉の中に餡を丸めて入れたものを作ったのが、日本での饅頭の最初とされています。元々は、諸葛孔明が川が溢れているのを鎮めるために、人柱の代わりに小麦粉を丸めたものを使い、それを「饅の頭(まんのとう)」と呼んだことから始まったといわれています。林浄因の子孫にあたる「塩瀬」がお饅頭屋さんの最初といわれ、京都の烏丸通六角辺りにお店があったようです。「塩瀬」は、天皇に付いて京都から東京へ移られたのですが、お店のあった辺りは、今でも「饅頭屋町」という町名が残っています。 |
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協力:大極殿本舗・六角店「栖園」 京都市中京区六角通高倉東入る南側 |
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