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京町家友の会

※「京の菓子暦」は、平成14年(〜15年)の取材記事です。
 暑さがひと段落して秋の気配を感じ始めると、やっぱりお茶はあたたかいのがおいしいなあ、おやつは甘いもんがええなあ、と思います。秋の和菓子は、特に色美しく、愛らしい姿をしているものが多いように見受けます。和菓子は京都人の毎日の暮らしに密接に結びつき、生活と心を豊かにしてくれています。毎月のお菓子を紹介しながら、その奥にある京都の知恵と文化を探れたらと思います。



◆着せ綿(きせわた)
 旧暦で九月九日は、重陽(ちょうよう)の節句です。中国では、大変おめでたい日とされていますが、日本では、知ってる人も少なくなってきました。「九」が「苦」を連想させるので、すたれてきたのではないかとも言われています。
 中国には「菊水信仰」があります。山の奥に咲く菊が川に流れて、その菊のエキスを含んだ水を飲むと、邪気を払い寿命を延ばすというものです。そこから生まれたのが「着せ綿」です。菊の上に真綿をのせて、菊の露を含んだその綿で体を拭くとよいとされているのです。そんな「着せ綿」をお菓子にすると、赤い菊の花の上に真っ白いふわふわとした綿がのり、こんな愛らしい形になりました。


◆秋の生菓子
 季節の生菓子には、それぞれに風情ある名前が付いています。
九月の「実り」は、栗のいがが、まだ緑色をしていますが、十月になると、茶色になって供されます。


秋桜(コスモス)

こぼれ萩

初秋(すすき)

玉菊

光琳

実り


◆おはぎ

 秋のお彼岸といえば、「おはぎ」。「ぼたもち」ともいいますが、「ぼた」とは、稲を脱穀した時のわら屑に混じる二級米のこと。最初からつぶれてるお米を「ぼた」と呼びます。そのようなはんぱもののお米を利用して作ったのが「ぼたもち」。「牡丹」に見立てて作ったともいわれますが、美しい花の名前を用いて、秋のお彼岸には「萩のもち」、転じて「おはぎ」と呼ぶようになったと思われます。
 そんな「おはぎ」を専門にする「今西軒」は、創業明治三十年。二代目が昭和の初めに苦労しながら研究を重ね、「おはぎ」を始めたところ有名に。物のない時代に小豆や砂糖をケチらずに使ったのが良かったのではと言われています。三代目は、現在八十歳。四代目を継いだ現当主は三代目の孫にあたり、おじいさんから直々に秘伝を授かる毎日です。


 つぶあん、こしあん、きな粉の三種類ある「おはぎ」は、自家製の「あんこ」をたっぷりと使っているのが特徴で、特に「こしあん」の色は、美しい紫色になるように、と先代がこだわった色を目指しています。「きな粉」も国産のものを使って、美しい黄色と風味の良さにこだわっています。
 「一からの手作り」にこだわり、「品の良い甘さ」の「おはぎ」は、お客さまによっては「これは和菓子ですね」とおっしゃるそうです。『「おはぎ」で商わせてもらってるのだから、ご家庭で作られるものと同じではダメですよね。やはり、それ以上のものを作るという「こだわり」を大切にしています』と、四代目の頼もしいお言葉です。

協力:大極殿本舗・六角店「栖園」 京都市中京区六角通高倉東入る南側
   「今西軒」 京都市下京区揚梅通諏訪町西南角 (五条烏丸西入る一筋目下る)
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