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京町家友の会

※「京の菓子暦」は、平成14年(〜15年)の取材記事です。
  牡丹の工芸菓子
  「立てばシャクヤク、坐ればボタン、歩く姿はユリの花」。この季節に美しく咲く大輪の花「牡丹」は、枝が横に広がって、大変据わりの良い形をしています。また「芍薬」の花は「牡丹」と似ていますが、こちらは茎が長くその天辺に花がついていて、スラッと美しい形です。そんな姿から美しい女性の例えに引用されたようですが、美しい花の姿は和菓子にも取り入れられ、その色、形、気品を模して、私たちの目を楽しませてくれます。
 和菓子は京都人の毎日の暮らしに密接に結びつき、生活と心を豊かにしてくれています。毎月のお菓子を紹介しながら、その奥にある京都の知恵と文化を探れたらと思います。


◆五月の生菓子
 「菖蒲(しょうぶ)」に「あやめ」に「杜若(かきつばた)」。何れ劣らぬ美しい花ですが、その違いは?というと、まず「かきつばた」は、湿地に育ち、その花の汁で布地を染めたことから「かきつけばな」と呼ばれ、それが転じて「かきつばた」となったといわれています。「杜若」とも書きますが、お菓子の場合は「燕子花」と書いて「かきつばた」と読ませます。花の形がツバメの飛んでいる姿に似ているからということでしょう。「菖蒲(しょうぶ)」は、「尚武」という漢字をあて、邪気を祓うとのことで端午の節句に用いられます。「あやめ」は、乾燥した地に生え、「シャガ」や「イリス」がその仲間です。

燕子花(かきつばた)

菖蒲(しょうぶ)

あやめ

 この季節の生菓子は、特に花にちなんだものが多く、華やかに、そして清々しい愛らしさです。



牡丹

青楓

山根つつじ

◆端午の節句

粽(ちまき)
 端午の節句に「ちまき」が付き物なのは、中国の故事で、旧暦の五月五日に湖に身投げした屈原の霊を「ちまき」を投げ入れて弔ったことに因んでいるといわれています。「ちまき」は儀式菓子ですが、「茅(ち)」という薬草で包み込むことにより、特に食物の保存に優れているようです。旧暦の端午の節句は、今の梅雨入りの時季にあたり、このころから祇園祭の間に「ちまき」を食べて厄病除けをしたのです。ちょうど祇園祭の終わるときを「ちまき」の食べ納めにしたようです。「粽(ちまき)」は、お米の粉である新粉を使ったものが一般的ですが、ほかにも「水仙粽」や「ようかん粽」など、ういろうやようかんを使ったものもあります。ちなみに、祇園祭宵山のときに鉾町で売られていたり、巡行の時に鉾の上から投げられる「ちまき」は、一年間家の玄関の上に掛けておく厄除けで、端午の節句のそれとは異なり、中にお菓子は入っていませんので念のため。
 

柏もち
 この時季のもう一つの代表的なお菓子「柏もち」は、民間のお菓子といえます。「柏もち」の柏の葉も食物の保存には適しています。柏の葉は、もとは古くより食物を蒸す時や盛るのに使用された炊葉(かしきば)に由来しています。柏は、新芽が出てから古い葉が落ちるので、家系が途絶えないという縁起から、端午の節句に食されるようになったと思われます。但し、新暦での端午の節句では、まだ新芽が小さく、「柏もち」には乾燥葉や塩漬けの葉をもどして利用します。「柏もち」には、こしあん入りと白味噌あん入りがありますが、白味噌を使うのは京都独特のもののようです。お店にもよりますが、中の「あん」の見分けがつきやすいように、柏の葉の表と裏で包み分けているお店が多いように思います。最近ではつぶあんの入っているものもあるようですが、さてお味の方はどうでしょうか?

協力:大極殿本舗・六角店「栖園」 京都市中京区六角通高倉東入る南側
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